テレビ番組では、どこでも料理やグルメの番組がある。いっとき日本では「男の料理」がもてはやされた。男は道具にこり、材料を惜しまず、最上の料理を目標に努力する。女性の料理は日々の生活の一部である。あるとき自分でも料理をと思い立った。K氏に話すとその場で老舗の「築地・正本」の社長へ電話をかけてくれた。素人用にと包丁3丁と砥石を2個購入。使うのはお客があるときとおせち料理くらいだ。
 最近読んだ「男のええ加減料理」、著者の強調する5つのしばりが面白い。
 ①材料の調達、調理、後片付けまですべて一人で完結=買い置きの材料は妻に断って使う。買い物が日常になれば閉じこもり防止にもなる。
 ②原則、味つけ調味料は1種=基本は「◯◯の素」など市販の合せ調味料を活用。失敗しても自分用なら食べられる。
 ③調理と食器を兼ねた土鍋を使う=土鍋なら食器兼用でテーブルにおいても様になるし洗い物は減る。
 ④使う道具は最小限=妻に一番嫌われるのは料理の後の散らかったキッチン、妻の城を使わせていただくという謙虚な姿勢がコツだそうだ。
 ⑤人(妻)に振る舞わない=この料理は人に賞味させて褒め言葉を期待するものではなく、自分用、日常のルーティンワークだ。
 これらのしばりは、男の料理を趣味のパフォーマンスでなく、引退後の日々の生活にリズムを取り入れ頭と体にハリを持たせて健康に過ごそうというところに狙いがある。
 亭主に自由な時間が増え家にいる時間が長くなると、妻は生活のリズムが狂い自由度が減ってストレスが高まる。朝昼晩と食事を用意せねばならず、お昼はまだか、夕食は何だ。出かけるとどこへ何をしに行く? 何時に帰る? とうるさい。夫の引退後にいさかいが増え離婚や別居夫婦が増える原因でもある。「男のええ加減料理」は一つの提案である。
 何を作ろうかと材料と予算、体調を考えながら構想を練る。料理は結構創造力をかき立てられる。妻やお客にほめられると豚も木に登る。ボケ防止になり、誰かの役に立てれば生き甲斐となる。さて、先輩諸兄はいかがであろうか?【若尾龍彦】

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