和食は2013年のユネスコの世界文化遺産入りを追い風に、認知度をさらに高め波に乗る。日本の農水省の7月の調査では、世界の和食店の数は2013年1月から1・6倍増と急速に伸びており約8万8650店。北米には1・5倍増の約2万5100店、最多のアジアは1・7倍増の約4万5300店、欧州では1・9倍増の約1万550店と世界に広がる。
共同貿易は、日本食のトレンドの紹介や啓蒙、教育にも力を注ぐ。「ラーメンは、レシピや調理方法をラーメン教室を開き教えている。ロサンゼルスに加え、デンバー、シアトル、ヒューストンなどの他州にも赴きラーメン文化の普及にもあたっている」(山本社長)。よりおいしい食材を求めて日本各地で探し、今回のエキスポでは、その中から高知の大トロマグロ、佐賀県呼子の剣先イカ、長崎のハーブ鯛・鯖が紹介された。これらは、セ氏65度という超低温で冷凍されているので、うま味が細胞に閉じこめられており、試食では高い評価を受けていた。
同社の顧客でカンザス州ウィチタから参加した南原英夫さんは、鉄板焼(140席)とすし(50席)を組み合わせた和食店「SUMO by Nambara」を15年間営む。地方部での和食店経営は都市部に比べ「競争相手が少ないので、地方はかえって強い」と説明。すしの食材の調達は、地方の難点だった空輸に頼ることもあったが「(冷凍技術の向上により)今は仕入れに問題はなく、いいネタがいつでも揃う」と話す。同州ではここ10年で、すし店が増え続けているとし「地方には、すしのビジネスチャンスがある」と力をこめる。地元の和食店経営者は中韓系とベトナム系が大部分を占め、希少な日本人が他と差を着けるには「お客さんのニーズに応え、高い品質と、高いサービスを保つことが大事」と強調した。
共同貿易の金井紀年会長は、この日の盛況を見て「普及に60年掛った」と、しみじみと語った。純和食から始まった紹介は、健康食と認められ、すしブームでは生魚を食べる文化が市民権を得た。他国の食文化に溶け込み、フュージョン食として形を変えつつも、同社は動向を先見しながら、時代の流れに対応している。日本食の定着について金井会長は「ただ儲けることだけでなく、文化として根付かせなければならない」と持論を述べ「大量に安く売って利益を得るのでは、食文化を壊すだけ」と警鐘を鳴らす。レストランオーナーなど業者に対しては「食材にこだわりを持って品質を追求し、文化を守ってもらいたい」と願い、セミナーでの啓蒙の重要性を強調する。
同社は海外にも力を入れており、山本社長は「近隣のカナダ、メキシコから南米はペルー、チリ、ブラジルなどの各国、また、ニューヨークでも欧州各国の他、ロシア、中近東など輸出先は合計40カ国に上る。『日本の味を世界の人々に』のモットーのもとに日本食市場の拡大に努めている」と話す。金井会長は「日本食は、無限に広がる可能性を持っている」と強調し、信念の正攻法の商法を貫き世界の市場を拓く。【永田潤、写真も】