最近小東京近辺で道を歩いていると小銭を要求される事が増えた。僕の見かけが声をかけやすいのか、はたまたそういう人が増えたのか。
 アメリカに来てすぐの頃、語学学校へ行くバスの乗り換えルートが小東京を通っていた。バスを待っていると手のひらに小銭を乗せた、今でいうホームレスらしき人から「チェンジ、プリーズ」といわれ、「両替してほしいのだな」と解釈。1ドルを渡し、手のひらの小銭を取ろうとしたら「サンキュー」といって去ってしまった。
 「ヘ?!」としばらく固まってしまっていた。ハッと気を取り直すと人影はもう遠くを歩いている。クラスで話したら、学友らも来てすぐの頃にやられたことがあったらしい。
 日本人町にいるホームレス(と、ひとくくりにして申し訳ないが)は、歩いている人が当地住民か来てすぐの人か見分けるのが早い。「チェンジ」が日本では両替、交換のことだということも知っていたのだろうか。こちらに来るまで本当に小銭もチェンジというのだとは思いもよらなかった。英語の授業ではちゃんと習ったはずなのに、例題ではほとんど交換の方だったように思う。
 二十数年前、小東京でのホームレス対策で商店主らが集まり、「小銭をあげるのをやめよう」という運動があったようだ、長くは続かなかったようだが。しかしそのせいかどうか、一時期小東京のホームレスの姿が少なくなったような気もした。
 今は交番などもあり小東京近辺も安全になってきたので、僕らが被った持ち逃げ風「物乞い」はなくなったようだ。
 今でも声をかけられるが、嫌な顔をせず頭を振って軽く「ノー」といえば引き下がる。何人かは顔見知り(?)風になり、声もかけず素通りしてくれる。
 たかが1ドルだが、何に使われるのかを考えず渡すのが人道的なのか、若い人たちなどには「仕事を見つけろよ」と断るのが逆にいいのか、考えどころではある。僕の給料だと「1ドルは△分の仕事だよな」と考えるのがつらい。【徳永憲治】

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