来年1月1日から、イリノイ州では娯楽性の嗜好品としての大麻が解禁となり、21歳以上の成人で、運転免許さえ提示すれば大麻がおおっぴらに購入できることになった。
 私たちの年代では「大麻」という言葉からは犯罪の臭いが立ち昇り、密売だの暗黒街だの廃頽的なイメージしか浮かんでこない。麻薬の常用で、仕事のストレスや人間関係の苦悩から逃れる開放感は、術後に処方される鎮痛剤で傷の痛みを一時的に忘れる開放感と似通っている、らしい。術後や外傷の痛みは薬剤に助けられていずれ回復する日がくるが、精神的な苦しみからの逃避は一時的なごまかしに過ぎないし、これを常用することで、大麻無しでは過ごすことのできない人も出てくるだろう。購入するための収入が無ければ、必然的に罪を犯してでも麻薬代を稼ぐ人も出てくる。
 州や市という地方自治体が大麻を開放するのは偏に収入源としての魅力であり、多額の赤字財政の解決策として、眼を瞑るわけにはゆかない「背に腹は変えられぬ」理由はあるが、それに伴う犯罪の増加の憂いもある。収入の一部は、「麻薬常用者の医療費援助に充てられる」というわけの分からない項目もあるそうで、思わず首を傾げたくなる。それでも大麻解禁が遅すぎたくらいだと言う意見もあり、インディアナ州ではまだ販売が禁止されているため、お隣からの顧客を期待する肯定的な声も聞こえてくる。私のような心配性の人間は、たばこ喫煙の害に劣らぬ大麻の害を恐れてしまう。
 先ごろ、電子たばこの害が次々発表され警報が出されていても、対策の方は今一つはっきりしない。大金を投資した製造元がそう簡単に販売を諦めるはずもないし、常用者は肺が機能している間は、吸引をあきらめないだろう。ギャンブルも然り。人間の弱点を利用したビジネスは息が長い。
 カンナビスと呼ばれる乾燥大麻の販売が人々の良識と自制心にコントロールされて、大きな弊害や、犯罪の副産物を産まないように祈るばかりである。【川口加代子】

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