コントラバスがうねりのある低音でメインメロディーを奏で始めた。目の前の60人ほどのオーケストラは第3楽章まで、タイトにまとまったすばらしい演奏を奏でてくれた。ベース・ソリストの歌が間もなく始まり、我々のコーラスがそれに続く。
 ロサンゼルスに40年ほど住んでいたのに一度も訪れたことのなかったメキシコ。青い空と青い海がどこまでも広がる絵に描いたようなリゾート地、ベラクルスでの第九コンサートにご招待いただき参加した。会場は波打ち際に建った美しい建造物のアートセンター、Foro Bocaで、クリスマスを2週間弱に控えたコンサートは完売だと聞きうれしくも驚きだった。
 総勢20人ほどのグループでの参加で、当日まで練習時以外はおいしい料理とテキーラの入ったカクテルを楽しんで無事にことが進んでいたのだが、コンサートの直前にメンバーの1人が体調を崩し、参加を断念せざるを得なくなった。ホテルの人が近くのクリニックに連れて行ってくれ、注射を打ってもらい翌日にはほぼ回復したが舞台には立てなかった。
 出掛ける前にアドバイスをいただき経験談に耳をかたむけ、飲み水に関しては皆注意していた。レストランで飲んだジュースに水道水が使用されていたのが原因だったようだ。同行した2人はビールを飲んだので免れた!
 サラダはご法度! フルーツも皮をむいて食べるものだけ! 濡れた食器は要注意! 飲み物に入っている氷はダメ! 歯磨きにはボトルウォーターを使い、歯ブラシ、カップのすすぎもボトルウォーターで洗浄。一日2~3回は磨くので使用量がかさみ買い足すのが面倒。途中から歯ブラシとカップの洗浄は水道の水ですすいだ後、アルコールをティッシュペーパーに含ませて拭いて殺菌する方法に変更した。アルコールは近くの薬局で安価に入手できて名案だったが、次に使う際に苦みが少し残るのが難点だった。
 コンサートは4回ものスタンディング・オベーションとともに大成功に終わった。
 食べ物以外では飛行機の発着の遅れがあったが、取りあえず全員楽しい思い出とともに帰国できた。
 Muchas Gracias【清水一路】

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