コロナ禍で、年に一度の健康診断を延期する人が増えたというが、私もその一人だった。健診は毎年、日本に行った時に受けていたのだが、パンデミックでそれができず、このたび久しぶりにアメリカで受診した。かかりつけ医に会う前に、ここ数年で気になっている体調についての質問を書き連ね、日本でもらった健診結果報告書の必要部分を英訳して準備した。
私がアメリカでの健診をちゅうちょしていたのは、腎臓の機能を示す血清クレアチニン値というのがいつも基準より高めで、いきなり治療が必要とでも言われた場合、心の準備ができていなかったからでもある。日本人用の国際腎臓病ガイドラインにある「腎臓の血液ろ過能力(eGFR)」の定義でいうと、私の場合、「慢性腎臓病」の条件を満たす。ただ、タンパク尿や糖尿病、高血圧といったその他の問題がないので、慢性腎臓病の原因疾患は分からず、日本の担当医には、「そういう体質の人もいるから、あまり心配しなくても良い」と言われた。でも、日本の健診結果報告書の判定欄に記された数字は、「日常生活に注意を要し、経過の観察を必要とする」の3で、「治療が必要」な4の一歩手前だったので、心配ではあった。
そして迎えた健診日。血液検査の結果が出ると、クレアチニン値はいつも通り高めだったが、アメリカの基準値は日本よりも高く設定されていることが判明。私の値もちゃんとその基準値内に収まっていた。国が違えば健診の基準値も異なることを知って驚き、2年以上もウジウジ悩んでいた自分がバカらしく思えた。コレステロールの基準値が、日本はアメリカよりも厳しいという話は聞いたことがあったが、クレアチニン値の基準が違うとは知らなかった。
何はともあれ、自分の体について詳しく知っておくのは良いことだから、今後も健診をきちんと受けて、日米の違いについても調べてみたい。そしてふと思う。日本の担当医が、「アメリカではこの数値でも基準値内ですよ」と言ってくれたなら、どれほど安心できただろう。「病は気から」というから、自分に都合が良いアメリカの健診結果を信じてみようか。(平野真紀)