昨年11月に歌手テイラー・スウィフトさんの北米ツアーチケットの販売が急きょ中止された騒動に対応して、米上院は24日、公聴会を開いた。当事者でチケット販売大手の「チケットマスター」の親会社は、舞台興行を行う「ライブネーション」で、巨大なチケット販売プラットホームと、世界で最も強力なコンサートプロモーターが2010年に統合されてから、業界は一手に牛耳られてきたが、司法省はこの騒動の前から親会社を反トラスト法(独占禁止法)違反容疑で捜査していたという。
ライブコンサートを愛してやまない私は、公聴会の中継を横目で見ながら「やれ、やれ、もっとやれ~」と議員たちの糾弾を応援した。騒動の原因は、チケット買い占めボット(ダフ屋の自動プログラム)への対策が不十分だったためと見られているようだ。
私もチケットマスターをよく利用するが、大物のコンサートでは一般販売が始まる前からチケットが他の転売サイトに流出したりする。また、あっという間に売り切れた直後に、大量のチケットが同じチケットマスター上に転売価格で現れたりする。私は大いに不満を感じるが、米国では転売行為が合法なので、高くつり上げられたチケット価格を「需要と供給の関係」と割り切る人たちも案外多いようだ。
確かにチケットマスターを通じての転売が「便利で安心」と思えることは否定できない。だが、正規価格で販売されたチケットが同じサイトで転売されると、転売成立時にもう一度、改めて手数料が発生する。つまりチケットマスターは1枚のチケットからダブルディッピングの恩恵を受ける。そんな構造なら、ボットを使う組織的転売業社を優遇しないわけがないと疑う。
BTSのコンサートに行った時、チケットを取ってくれた友人が言っていたことを思い出す。
「ねえ、知ってる? アリーナの前列、あそこらへん、今日の午後まで4千ドルや5千ドルの価格で売りに出ていたのよ。あの人たち、それを買ったのかな、それとも売れなかったから自分で来たのかな。そもそもどうやって取ったのかな」
実に知りたいところだが、ソーファイ・スタジアムの5階の桟敷席からでは、下りて行って確かめるすべもなかった。(長井智子)