あっぱれ。おめでとう。侍ジャパンが、7戦無敗で3度目のワールド・ベースボール・クラシック(WBC)優勝を果たし、列島を沸かせた。日本での1次、準々決勝ラウンドで圧倒的な強さを見せたが、準決勝、決勝は先制されての逆転勝ち。ファンは連夜の劇的勝利の余韻にしばらく浸り、ハラハラ、ドキドキの応援疲れを癒やしてほしい。
期待通りの活躍を見せた大谷がMVPに輝いた。投打の「二刀流」は、先発登板で見慣れているものの、先発打者が救援登板のためにブルペンを行き来する姿は信じ難かった。それを当たり前のようにやってのけていた。
生放送のスポーツチャンネルでMVPとしてインタビューに答えた。その受け答えが、これまた素晴らしい。おごらず、倒した相手を「リスペクトしている」と思いやり、われら在米の邦人の気持ちを代弁しているようで、ますます好きになった。「大谷がいたからこそ」「大谷さまさま」などと誉めちぎるファンが多いが、本人はチーム全体でつかんだ勝利を強調。さすがだ。
決勝の見せ場となったエンゼルスの同僚トラウトとの夢の対戦が、九回二死に巡ってきた。大リーグでは所属チームのエンゼルスは弱くプレーオフ出場は遠のいており、大一番の緊張感を味わうことがなかった2人にとって、WBC出場は渇望した大会だったに違いない。トラウトとの対戦は「最高のシナリオだと思っていた」と、大谷は発言している。思えば、このドラマは試合前のセレモニーの時から始まっていたような気がする。入場行進でそれぞれのチームの旗手を務めたのは、日の丸の大谷と星条旗のトラウトだった。投手と打者として後の両雄の一騎打ちを暗示させるかのようだった。
大谷は100マイルの速球で押し、トラウトのバットは空を切る。空振りかホームラン、というスリリングな力勝負。フルカウントとなった最後は、キレのいいスライダーで空振り三振に仕留めた。
両手を広げグラブと帽子を放り投げ叫び、歓喜の輪の中でチームメートと抱き合った大谷。いつもは冷静なジェントルマンだが、今大会は珍しく闘志をむき出し、チームメートを鼓舞し続けたのが印象的だった。次の大会は3年後。4度目の頂点を目指し、リーダーとなってチームを引っ張るに違いない。(永田 潤)