3人の受賞者に対する奨学金授与式。左からハッピー水谷・奨学資金部長、北垣戸和恵会長、アリソン・デービスさんの代理の母カズミさん、安次富美代さん、ケンナ・タガワさんの代理の母キャシーさん、曽根健孝総領事、森ジョージ・奨学資金会計委員

 39の県人会が加盟する南加県人会協議会(北垣戸和恵会長)は、育英奨学金集めのための第41回親睦演芸会(小田和男・演芸部長)をこのほど、アラタニ劇場で催した。各県人会から芸達者たちが舞台に上がりバラエティーに富んだ出し物を披露し、観客約500人が「芸術の秋」を満喫した。奨学金授与式では、日本文化継承者と日本語学習者の中から選ばれた受賞者がさらなる精進を誓った。

色鮮やかな民族衣装に身を包み琉球舞踊「加那ヨー」を踊る安次富美代さん

 新型コロナウイルスの影響で演芸会は2019年以来4年ぶりの開催。コロナ禍の活動休止による準備不足のため今年は不参加の県人会もある中、この日のために集まって練習を重ねた出演者が晴れの舞台を踏んだ。
 第1部は12県人会から16演目、三味線や唄、歌謡曲、ダンス、日本舞踊、琉球舞踊、故郷の祭り、剣舞など、お国自慢の郷土色豊かなステージで熱演した。
 幕間に奨学金授与式を催し日本語学習や日本文化の各分野で将来が嘱望される受賞者3人にそれぞれ千ドルの奨学金と賞状が贈られた。受賞者はケンナ・タガワさん、アリソン・デービスさん(ともに鹿児島県人会推薦、日本語学習)と安次富(やじふ)美代さん(沖縄県人会推薦、琉球舞踊)。受賞者を代表し安次富さんがきれいな日本語で謝辞を述べた。「育英奨学資金の受賞者として、このステージに立つことは非常に光栄で誇らしく思う。われわれを推薦してくれた鹿児島県人会と沖縄県人会の皆さんと、習い事を続けさせてくれた家族に感謝したい」と話した。「この奨学金はわれわれが習っている日本語、合気道、日本舞踊、琉球舞踊などの日本文化の継承と普及に向けて頑張る大きな励みになる」と力を込め、「米国で生まれ育ったわれわれが将来、日本文化の継承者となれるように頑張りたい」と抱負を語った。安次富さんは、演目プログラムで色鮮やかな黄色い伝統柄の着物を身に着け琉球舞踊を踊り、奨学生としての腕前を披露した。

写真上】日本民謡「松豊会」とのコラボで「東京音頭」など歌と踊りを披露した東京会の有志たち【同下】桃黒亭一門が歌う 「ニッポン笑顔百景」に合わせて元気に踊る徳島県人会の子どもた

 県人会協議会は、奨学金を過去41年にわたり約300人に授与しており、次世代を担う文化人の育成事業に力を注いでいる。受賞者について、あいさつに立った北垣戸会長は「日本の伝統文化や芸術、日本語を習得してきた、その長い過程で各人がアイデンティティーを確立し、感性豊かな人物に成長した人ばかりである。3人を支援してきた家族にもお祝いを言いたい」と称賛。「この受賞を誇りとして、習得した知識や能力を軸に将来、当地で日本文化の紹介や普及に努めてほしい。ぜひ次の世代へと継承し、さらに文化を通して日米を結ぶ大きな懸け橋として活躍し、日系社会を元気にしてほしい」と期待を寄せた。
 また演者について「各県人会の代表が、この演芸会のために練習に励んできた。特色のあるパフォーマンスは、とても素人と思えないレベルの高さだった。各県人会の特色が多分に表れていて、この県にはこのよう伝統文化があるのかということが分かってもらえたと思う」と胸を張った。「演芸会は県人会協議会が奨学資金を捻出するために重要な催し物であり、日本の伝統文化を継承する上でとても大切である」と、開催の意義を強調した。

艶のある美しい声で熱唱する小沢あきこさん

 第2部は、日本から招いた日本コロムビア所属の演歌歌手、小沢あきこさんが芸者姿で舞台に上がった。歌い出しにはデビュー30周年記念の新曲で、自身の故郷長野・飯田を舞台にした「風恋し」を披露し、艶のある美しい声を会場いっぱいに響かせた。
 演芸会出演4回目という小沢さんは「はじめましてという方も多いかもしれないが、こうして皆さまにまた会うことができてうれしい」と、再会を喜んだ。「これまでは『アッコちゃん』と呼ばれていたが、デビュー30周年を機に生まれ変わり『アッコ姉さん』としてロサンゼルスに戻ってきた。今日は芸者姿で歌わせてもらう」と言い、2曲目の「芸者ワルツ」を歌った。さらに「東京音頭」や「鹿児島おはら節」など、当地の県人会でなじみの曲を織り交ぜ、会場を練り歩いて歌うなどファンと触れ合った。最後は所属事務所の大先輩で尊敬する島倉千代子さんから歌い継いだ名曲「鳳仙花」で締めくくり、全10曲を熱唱。終演後はCD販売のブースでサインや写真撮影に応じ、ファンサービスに努めた。ファンから「また来てね」と声をかけられ、「戻ってくるね」と再会を約束していた。「皆さんが温かく迎えてくれてとても気持ちよく歌うことができた。米国で芸者姿で舞台に立ち、新曲も披露できてうれしい」と喜んだ。

観客と触れ合い握手する小沢あきこさん

 小沢さんは滞米中、「芸者姿で日本の伝統美を紹介したい」と精力的に活動し、限られた時間を有効に使ってハリウッドや大谷翔平選手が所属したエンゼルス球場、ラスベガスにも足を伸ばした。行く先々で、歓迎を受け笑顔を振り巻き、人々との写真撮影に応じた。YouTube用の動画撮影も行い、小東京では二宮尊徳像や櫓(やぐら)、全米日系人博物館の旧館を背に「リトル東京に来るとホッとする」「100年以上の長い日系社会の歴史を感じる」などと感想を述べた。
 小東京ではまた、日本村プラザの広場で歌うワンマンバンドのアーサー中根さんを表敬訪問した。2人は初対面ながらミュージシャン同士で意気投合し、中根さんは小沢さんのコラボの申し出を快諾。曲は米国人にもなじみの「上を向いて歩こう」を選んだ。即席ユニットだったが、息はピッタリと合い、拍手と喝采を浴びた。

【写真上】鳥取しゃんしゃん傘踊り」を披露する鳥取県人会【同下】熊本県人会のミカエラカイ(中央)らによるフラメンゴ「人生のメリーゴーランド」

 県人会協議会は小沢さんのために歓迎会と慰労会を開いた。小沢さんは「いつ来ても皆さんに歓迎されてうれしい。皆さんの期待に応えることができるように頑張りたい」と述べた。
 北垣戸会長は演芸会開催を決めた時、十分な数の出演者が集まるか不安だったことを明かした。だが、各県人会から協力が得られ、「コロナ禍の4年のブランクがあったが、皆さんが今日のために練習してくれた。限られた予算の中で、皆が知恵を絞って目標に向かって頑張った。皆の協力のおかげで成功させることができた」と喜んだ。奨学金の受賞者3人に対しては「小さい頃から習い続けてきた日本語と琉球文化をずっと続け、それぞれの道で頑張ってほしい。日本語と日本文化は、日米・国際交流の強みになるので、日本人としてのアイデンティティーを大切にし、誇りを持って生きてほしい」と願った。
 県人会協議会の今年の活動はこの演芸会で終了。来年は役員就任式(2月11日)、ゴルフ大会(5月24日)、創立60周年記念式典(6月30日)、ロサンゼルス七夕まつり(8月)、敬老会(9月)、演芸会と奨学金授与式(10月)を予定している。

舞台を降りて会場を練り歩き歌う小沢あきこさん

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