第20回「米国高校生による日本語スピーチコンテスト全米大会」の表彰式。左から鈴村奈々審査委員長、優勝したマックス・ソーベルさん、オーロラ基金の飯富崇生理事長代行、阿岸明子顧問

 オーロラ日本語奨学金基金が主催する第20回「米国高校生による日本語スピーチコンテスト全米大会」がこのほど、国際交流基金ロサンゼルス日本文化センターで開催された。全米各地区のコンテストで入賞し推薦を受けた10人が出場し、熱弁を奮った。ニューヨーク州のセイント・アンズ高校12年生のマックス・ソーベルさんが優勝し、世界大会への出場権を獲得した。

「初心者になる」をテーマに話す優勝したマックス・ソーベルさん

 このコンテストは米国で日本語を学ぶ、日本語を母国語としない高校生に発表の場を提供し、日本語学習意欲を高めるために毎年開催され、優勝者は米国代表として世界大会へ派遣される。全米大会はコロナ禍以降、Zoomによるオンラインで開かれていたが、今年は5年ぶりに対面開催となったことから、関係者や出場生徒の家族、ホストファミリーなど多くが会場で観覧して大会は盛り上がりを見せた。
 鈴村奈々審査委員長(カリフォルニア州立大学ロングビーチ校助教授)をはじめとする6人の審査員による厳正な審査の結果、マックス・ソーベルさん(「初心者になる」)が優勝した。準優勝および世界大会の補欠にはアラスカ州アンカレッジのダイアモンド高校12年生のリーナ・イデイスさん(「私の日本語学習の旅」)が選ばれた。出場した高校生は自分たちの実体験から感じたこと、学んだことを日本語で上手に表現してスピーチし、それぞれ大きな拍手を送られた。会場で大会を観覧した多くの日本人から、生徒の日本語スキルの高さや多彩なスピーチ内容をたたえる声が聞かれた。
 流ちょうな日本語を披露したソーベルさんは、「物の見方を変える扉を開けてくれた日本での体験を話したい」と切り出し、夏休みを利用し訪れた日本で、「禅」の本に出会ったことから、物の見方が変化したと述べた。本を読んで日本の僧侶の日常生活や座禅、悟り、禅の暮らし方と考え方を学んで、「禅に魅了された」。本を新宿御苑で読み、読み終えて石畳を歩いていると、「園内の全てが変わり、色が純色に見えるような気がした」。その変化について、「(周りの)世界の違いではなく、私の視点の違いだった。以来、平凡なことに注意を払うようになった」と述べた。

【写真上】「私の日本語学習の旅」をテーマに話す準優勝のリーナ・イデイスさん【同下】「私の日本語学習の旅」をテーマに話す準優勝のリーナ・イデイスさん

 「禅には『初心』という概念があり、全てのものに対して初心者の心構えで接することを意味する」と説明し、「その日、新宿御苑で『初心』の本質を体験した。それ以来、生活の他の分野でも初心者になろうとしている。このように禅の考えが私の心に深い印象を与えた」と語った。帰国日に空港へ向かう途中に新宿御苑が見え、「貴重な経験と学びに感謝しお礼を言った」と、物語風に弁論を締めくくった。
 特別ゲストスピーカーとして、サンディエゴ出身で現在は日本で女優として活躍しているサフィヤ・クインリーさんが、東京からZoomで参加した。クインリーさんが日本で実際に体験している仕事や生活の話は具体性に富み臨場感にあふれ、日本との関わりをより深めたいと希望する高校生らは刺激を受けた様子だった。
 オーロラ基金の飯富崇生理事長代行は大会について、「米国の高校生が日本語の学習に励んでいることと、日本語教師の皆さんの熱意ある指導に感銘を受けた。このスピーチコンテストが日本語を学ぶ若者の実力向上に資することを喜び、今後も米国での日本語教育に貢献できることを願っている」と述べた。
 米国における日本語教育の支援を軸に活動するオーロラ基金は、日本語学習者が日本文化への理解を深め、将来日米の架け橋として活躍する国際交流を促進している。
 スピーチコンテストの録画は、ウェブサイト(https://vimeo.com/952706793/04b520cdf2)で視聴できる。
 ホームページ—
 www.jlsf-aurora.org/eng

第20回「米国高校生による日本語スピーチコンテスト全米大会」の様子。5年ぶりに対面で開催され、多くの参加者で盛り上がりを見せた
オーロラ日本語奨学金基金主催の日本語スピーチコンテスト全米大会に出場した10人の高校生(前列)と大会関係者

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