西郷どん(西郷隆盛)と犬とは切っても切れない仲だった。友人から運動不足になりがちだと言われて犬の散歩を勧められて始めたという。
私も毎朝、愛犬の散歩をしている。手術後は一時中断していたが、7月初めから再開した。毎日、朝、すでに他界した義兄が一緒に歩いた時「100年たっても日本にはこんなきれいな町は作れない」と言っていたわが町の街路の草木を愛でながら、時には「ウォーキング・メディテーション」(歩行瞑想)している。
車社会の米国人はニューヨークなどを除けば、日本人のようには歩かない。日本人は都市圏から離れた地方に住んでいる人以外はよく歩く。「駅まで徒歩10分」などと書かれた不動産のチラシをよく見る。徒歩が距離を知る尺度になっている。
江戸時代の人は、江戸から京都まで492キロを2週間かけて歩いた。歴史家の木寺英史氏によれば、わらじを履いて地面に踵をつけて歩いたため、スピードは出ないが、持久性があったという。膝をつけて上半身を動かさずに歩くのであまり疲れなかったらしい。
大好評だったテレビドラマ「The Shogun」の登場人物は、当時の人たちの歩き方を習得するのに苦労したらしい。時代考証の専門家から徹底的に学んだという。
歩き方から現代風になったのは、富国強兵を目指した明治維新の時、さらに戦後、スポーツ促進の流れの中で欧米的スピード万能主義に切り替えた時だった。歩くことで、自分の行きたいところに行ける。これは人間にとって最大の特権だ。寝たきりになった時、この特権が奪われる。人間は自殺や心臓発作で死なない限り、死ぬ前には必ず寝たきりになる。
専門家によれば、1日4千歩歩けば、うつ病の予防に、5千歩歩けば、認知症を予防できるという。歩けなくなったらどうする。車椅子操縦術をマスターしよう。自動式なら歩くより早く移動できる。「病気も気から」なら「老いも気から」だ。水前寺清子の「三百六十五歩のマーチ」でいきましょう(鳥渡(ちょっと)古いかな)。(高濱 賛)
