52演目に出演する会員らが勢ぞろいして開幕するおさらい会。ゲストの坂東秀十美師が祝儀舞「松寿三番叟」を踊る

 民謡団体「松豊会」はこのほど、ガーデナのケン・ナカオカセンターで弟子によるおさらい会を開催し、日本各地に伝わる民謡や舞踊を披露した。プログラムには全52演目が並び、初舞台を踏む出演者から名取や師範までが日頃の稽古の成果を発表。会場は家族や友人らの温かい拍手に包まれた。

茨城県の民謡「大洗甚句」を歌う小杉真リサさん。後方左で三味線を奏でる母・佐藤松豊師と息の合った共演を繰り広げる

 松豊会は主宰の佐藤松豊師が1966年に設立し、日本民謡の伝統と豊かさを守り育てることを理念に生徒を育成し、活動してきた。開会にあたり司会者は「会員たちは情熱と真心を持って稽古を重ねている」と述べ、来場者に民謡の魅力を楽しんでほしいと呼びかけた。

 幕開けは祝儀舞「松寿三番叟」「博多どんたく」「熊本自転車節」「隠岐祝い音頭」の4曲をメドレーで合奏。その後は、生徒がそれぞれの演目を披露し、日本各地に受け継がれる民謡の数々を奏でた。

 発表は三味線、歌、そして三味線と歌の両方を1人でこなす「弾き唄い」など、個人の技量に応じて多彩に展開された。師匠や先輩、仲間が三味線や鳴物、歌や踊りで舞台を支えた。また、舞踊部の会員がそろいの衣装で群舞を披露すると華やかさはいっそう増した。踊りでは他に、ゲストの坂東秀十美師と坂東拡三也師、秀十美師の弟子である川上愛実さん、和都実さん、マックギボニー美亜子さんが色を添えた。

世代を超えた共演も見どころの一つ。子どもたちも舞台に立ち、日本の伝統芸能を受け継いでいる

 一般会員に続いて名取、師範と進むにつれて、演奏さらに深みを増した。終盤は小杉真リサさんの「大洗甚句」、そしていよいよ松豊師が舞台中央に立った。恒例の「民謡玉手箱」は事前に演目を決めず、観客のリクエストなどに応えて松豊師が唄を披露するコーナーで、松豊師は観客と対話しながら、近況を報告し、「おてもやん」と「小原節」で美声を響かせた。観客の中に長年弟子として教えを授けた元生徒の鶴留公子さんを見つけると舞台に上がることを促す一幕も。鶴留さんは突然の指名に驚きの表情を見せながらも師匠と共に楽しそうに歌い、会場はその姿に大きな拍手を送った。この心温まる様子は、松豊師がこれまで多くの人に教え、当地の日系社会にまいた民謡文化の種が深く根を生やしていることを印象付けるものだった。

 フィナーレは「よさこい鳴子踊り」「常磐炭坑節」で締めくくられ、演奏に合わせて輪になって踊る観客の熱気と共ににぎやかに幕を閉じた。

富山県の民謡「こきりこ節」を披露し、華やかな群舞で観客を魅了する舞踊部

 公演後、松豊師は「皆が本当に頑張ってくれた」と笑顔でおさらい会を総括した。近年は弟子たちが中心となって会を運営しており、「今回は、私はほとんど何もしていません。大半を娘(小杉真リサさん)や弟子たちに任せ、みんなが力を合わせて作り上げてくれました。失敗もあったかもしれませんが、本当に心温まる、助け合いの会になりました」と目を細めた。また、「新たに5人が名取となり、頼もしい人たちがどんどん育っています。そろそろ安心して任せられるようになってきました」と後進の成長を喜んだ。そして、「来年2月には大きな会を予定しているので、元気に舞台に立ちたい」と意欲を語った。

 創設以来61年にわたり南カリフォルニアで民謡文化の継承に取り組んできた松豊会。世代交代を進めながら、歩みを着実に重ねている。(長井智子、写真も)

観客も輪になって踊り、笑顔と熱気に包まれるフィナーレ

Leave a comment

メールアドレスが公開されることはありません。 ※ が付いている欄は必須項目です