マクドナルドに代表される手軽で安価なファースト・フード産業は成長の一途をたどり、アメリカ国民の成人病もまたそれに比例して増加している。
 国民一般の味覚にあわせた食べ物をいかに早く提供するか、という課題は、高脂肪、高カロリー、塩も砂糖もたっぷりなメニューで解決された。
 男性に寄りかかることを潔しとせず、育児や料理の時間を職場進出に置き換えた女性もまた、ファースト・フードの恩恵を受けて経済的自立を計っている。と言うのは大げさかもしれないが、そう外れているとも思えない。
 すべての国民に健康保険を、しかしできる限りそのお世話にならない健康的な暮らしをと考えるとき、この頃の肥満児の急増には、豊かでありながら質的に劣化する食生活と、運動不足を促進するコンピューター・ゲームやテレビの貢献するところが大きい。
 ふっくらと可愛い肥満児の増加からは、近い将来病人だらけのアメリカを展望することになりそうだ。
 オバマ大統領は、ファースト・フード産業が、栄養のバランスを無視したメニューで自社の売り上げを伸ばすことに歯止めをかけようと、それぞれのメニューには含まれているカロリーを掲示することが義務つけられる条例に署名した。食欲をそそるメニューの横のカロリーを参考に、どれを選ぶか、消費者が自分で判断をするというもの。ポピュラーなサンドイッチの、一品800から1300カロリーという数字を見せられると、食い意地の張った私でさえ思わず注文をひかえてしまう。
 医食同源という言葉を今一度考えて見るべきである。
 ファースト・レディがホワイト・ハウスの庭に菜園を作り、子供たちに土を耕し野菜を育て、収穫をするという基本的な教育を、自ら行っていることに拍手を送る。食べ物が工場のコンベア・ベルトの上でできるのではなく、土の中から新鮮で栄養の豊かな食品が生まれるという事実を、大人もまた再認識せねばならない。
 それにつけても健康志向が謳い文句のオーガニック食品の高値は…不健康だと思いませんか。【川口加代子】

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