連邦政府は2年に1度、ホームレスの人口動態調査を地方自治体に課している。その統計によると、住むところを失った人の多くが、とりあえず車中生活になるという。車社会のアメリカだから、ごく自然な流れなのだが、ついでに気候温暖な地域へと車を走らせるのも自然な流れという。ロサンゼルス郡が全米の「ホームレス・キャピタル」と称されるゆえんでもある。
誰だってホームレスになりたいとは思わないが、なにかの理由で仕事を失えば、誰だってホームレスになる可能性がある。ロサンゼルス郡には推定4万3000人のホームレス・ピープルが住んでいる。このうち三分の二はシェルターでの寝泊まりを嫌い、路上やフリーウエイ脇の灌木の陰などに潜んで夜を過ごしている。車を所持している人でも、やがては車を売り払い、野宿の日々を送るようになるという。
先週、同郡で行われたホームレス調査に参加したボランティアは延べ5000人。地図とクリップボードと懐中電灯を持って歩き回る。相手に直接「ホームレスですか?」と尋ねることはなく、夜になってから彼らの寝床を確認する。調査結果によって連邦政府からの助成金が決まるから、責任は重い。
1月に就任したブラウン知事が第一に優先させなければならないのは12.5%という高失業率の改善。その環境づくりの政策を実行していかなくてはならない時に、先ず打ち出したのが「地域再開発局の閉鎖案」。
再開発事業は雇用を創出し、地域経済の発展に有効な施策。知事もその効用を承知しているからこそ、自身がオークランド市長時代は再開発事業に積極的に取り組んだ。しかし、知事になったら「無い袖は振れぬ」と一変。政治家としての節操を疑われても仕方ない豹変ぶりだ。
ただ、公用車を乗り回す無駄に気付いたのは救い。州政府所有の1万1000台のうち4500台は「持ち帰り」自由の乗り放題。近く5500台を売却して1650万ドルの経費削減を図るという。また、州政府が支払っている職員の携帯電話のうち約半数の契約も解除する。
役所仕事に無駄は多い。叩けば叩くほど無駄が表面化する役所経費を削減していけば、雇用を生む再開発事業を止める必要はなくなる。仕事が増えればホームレス状況も緩和される。【石原 嵩】