国、自治体、民間の総力を結集して被災地のライフライン、インフラの早期整備と住民生活基盤の再構築を急げ、と日本人は一丸となっている。「巡幸」される天皇皇后両陛下に勇気づけられる被災者たちも少なくない。
ところが、国の行政の長、内閣総理大臣に期待する声がどこからも聞こえてこないのはどうしたことだろう。
それどころか、この危機に「菅首相はリーダーシップを発揮していない」と答えたものは、76%に達している。
膨れ上がった首相不信の中で、菅首相が与野党の全面協力を望むなら、ここまでやったら退くという「ロードマップ」を示せ、といった声も出ている。
つまり、福島第一原発の放射能漏れを止めた段階で、とか、復旧対策を盛り込んだ第一次補正予算案を成立させた時点で辞任するといった道筋を示せ、というわけだ。
明治のジャーナリスト・徳富蘇峰は、「大改革を成し遂げるには、思想家と破壊者と創造者の三種類の人間が必要だ」(史論「吉田松陰」)と説いた。
明治維新に当てはめれば、思想家は坂本竜馬、吉田松陰。破壊者は木戸孝允、大久保利通、西郷隆盛。創造者は伊藤博文と山県有朋。
スケールは小さいが、政権交代を実現させた民主党の小沢一郎、菅直人、鳩山由紀夫各氏は差し当たり「破壊者」たちだ。
「だが、彼らもまた、古い体制のしがらみを引き摺っていて、創造者たりえない。明治維新は黒船で、戦後改革はGHQのパージによって前世代の政治家は一掃された。だが、民主党の破壊者たちは、外圧でもない限り、政権にしがみつく」と、元商社マンでハーバード出の林芳正自民党政調会長代理は見ていた。(「国会議員の仕事」中公新書)
が、大震災は「外圧」ではないか。日本を再生させる仕事はまさに「大改革」そのものだ。
だとすれば、「破壊者」にはご退場願って、「創造者」に登場願う絶好のチャンスではないか。〈そんな政治家はいない〉というのであれば、官僚でも実業家でもいい。〈出でよ、創造者〉である。【高濱 賛】