福島第1原発20キロ圏内に残された動物の現状を説明する今本獣医師

震災から約1カ月後の4月15日、福島県の養豚場のブタはほとんどが餓死していた(写真提供=今本獣医師)

 東日本大震災で被災した動物の保護活動をする団体を支援する「日本被災動物ミッション」(JAMDA、代表=西山ゆう子獣医師)は11日、福島第一原発20キロ圏内に残された動物の現状を理解してもらおうと、奈良県から何度も現地に足を運び、調査や救助活動を行っている今本成樹獣医師を招いたチャリティー講演会をロングビーチの「SPCALAアニマルシェルター」で催した。
 今本獣医師は、ニューオーリンズで開かれた学会の帰りにロングビーチを含め3カ所に自費で立ち寄り講演。ロングビーチの会場には、立ち見を含め60人を超える参加者が集まり、被災動物の厳しい現実に耳を傾けた。
 講演の中で今本獣医師は、福島県の警戒区域内に残された動物の様子を撮影した写真やビデオを見せながら説明。原発の影響から飼料を売ってもらえなくなった牧場主が、毎日片道100キロを往復し家畜に与えていた話、飼料庫の破壊に成功したブタが半野生化し繁殖、多数の子豚を連れているシーン、また原発で働く作業員が自分のお昼を野良猫と分かち合って食べている話なども披露された。
 一方で、立ち入り禁止区域に残された乳牛や鶏などが、震災に生き残ったにもかかわらず、飼料がない状態で2カ月後にはすべて死んでいる映像も流した。今本獣医師は、目を背けてもらって構わないと前置きした上で、真実を正しく伝えたいと述べ、小学生にも同じ映像を見せるという。そして、子供たちから寄せられる「どうして放置したの?」との質問に、大人や国はきちんと答えるべきだと訴えた。
 また、家畜とともに生活してきた福島の人たちの気持ちにも触れ、「東海村臨界事故が起こった時、避難は2、3日だった。そのため、今回も多くがすぐに帰れると家畜を置いて避難、その後立ち入り禁止になり戻ることができなかった」と説明した。
 さらに、犬や猫を救済するボランティアは多くいたが、同じペットでもヤギなどは家畜に分類され救出されず、人間の助けなくして生きることのできないペットや家畜などをどこで線引きをするか、今後の課題は多いと話した。
 南相馬市の桜井勝延市長の言葉、「復興とは、自尊心を取り戻す闘い」を引用し、今本獣医師は「大切な家畜をこのような形で失い、傷ついた酪農家や農家の人たちの心のケアが必要」と述べ、(1)動物問題の早期対処(2)原発問題の見直し―の重要性をあらためて訴えた。
ペットの応急処置について話をする西山獣医師

 第2部は、JAMDAの代表で、ガーデナ市で開業する西山ゆう子獣医師が講演した。94年1月17日に発生したノースリッジ地震の際、震源地から1ブロックの位置にあった自宅が半壊状態の中、愛猫と避難した自身の壮絶な被災体験を披露。自分で用意ができないペットのためにも、ペットフード、薬、キャリー、リードなどの準備をしておくよう強調した。また、飼い主とはぐれた際に役立つマイクロチップ装着の重要性も訴えた。
 負傷したペットの応急処置として、日ごろから心拍数や呼吸のパターンなどを知っておくことで異常をいち早く確認できることや、擦り傷や骨折に備え、タオルやガムテープなどを準備しておくようアドバイスした。
 JAMDAは、東日本大震災発生直後に設立。被災したペットを保護し新しい飼い主を探す活動や、被災した飼い主の生活が安定するまでペットの一時預かりをする民間団体「アニマルレフュージ関西」(ARK)を支援するため資金集めをしている。
 11日の講演会会場では計1228ドル39セントが集まり、送金手数料などの最低雑費を除き、全額がARKへ寄付される。その他、JAMDAの活動内容など詳細はホームページで―
 www.jamdapet.com
【中村良子、写真も】
会場では募金箱が設置され、この日だけで計1228ドル39セントが集まった

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