全米でもっとも政治家の贈収賄罪が多いという不名誉な記録を樹立したイリノイ州。第39代のジョージ・ライアン、40代のブラゴイエヴィッチと続いて州知事が有罪で刑務所へ送られる州なら、全米一になって何の不思議があろうか。
かく言う私も、1期目の選挙では「移民の子」であるブラゴに一票を投じ、汚れた共和党から30年ぶりに政権を民主党に奪還し、同じく民主党のシカゴ市長と足並み揃えて清いとまではいかないまでも、もう少しまともな政治をと願ったのだが…。
いかにすばらしい政策を打ち出そうと、政治家を百パーセント信用するなど愚の骨頂であるし、いつも話半分、三分の一で聞いているつもりでも、二者択一なら少しは若くて新風を吹き込んでくれそうな候補者を、ましてや移民の子で「鉄工所で働く父の苦労を見て育ちました」などと言われれば、ついほろりと一票…。
何が腹立たしいかと言って、二期目の選挙運動中に「チルドレン・メモリアル病院への州の助成金は、病院関係者が選挙資金を寄付すると確約するまで支払いを許可するな」という指示を側近に出していたという事実。州民から絞り上げた血税を、私利私欲のために掌で転がす傲慢さ。
「殺人傷害というわけでもないのに禁錮14年は厳しすぎる。残された家族が気の毒」などと言う心優しい州民もいるけれど、家族はともかく政治家の汚職にはきついお灸が必要である。
このブラゴ前知事、在任中はヘアスタイルを人一倍気にして乱れた髪を見せたことがなかった。刑務所にも理髪師がいて、トレードマークのヘアスタイルは維持できそうだが、白髪染めは禁止されているそうで、数カ月もすれば玉手箱を開けた浦島太郎のようになっているかもしれない。
10年前、選挙を戦うミスター・ブラゴが新鮮でエネルギッシュに見えたのは、ひょっとしてあの黒々とした豊かな髪の演出に騙されていたのかもしれない—こんな記事を読んでいた友人のリチャードが、「馬鹿バカしい。ブラゴの白髪がなんだって。他にもニュースはあるだろう」と新聞を放り出した。
いや、全くそのとおり。【川口加代子】