7月に再開が予定される日米劇場
 耐震性に安全上の問題が生じ、昨年1月から休館状態にあったアラタニ日米劇場の補修工事が完了し、7月に1年半ぶりに再開の見通しとなった。それを受け1日、劇場を所有する日米文化会館でグレゴリー・ウィリス館長兼CEOが、劇場利用者や日系メディアなどを集めて説明・意見交換会を開いた。永続的な劇場運営の指針が示され、サービスの向上、経営の再建を図る。
 劇場は築30年以上が経ち老朽化し、大規模の地震が起きると天井部が崩落する危険があった。ウィリス館長は、補修を済ませ安全を確保したことを強調し「7月に仮オープンし、8月か9月頃に正式に再開させたい。こけら落としとして、記念イベントを開いて再開を祝いたい」と話した。
劇場再開の説明会で、参加者の意見に耳を傾けるウィリス館長兼CEO
 再開まで1年以上が経過したのは、資金難が一番の理由だと言う。閉館や非日系による買収などの憶測を呼んだが、再開に向け準備を進めていた。財政面の立て直しを目指し、新館長にウィリス氏を招聘。同氏は20年以上にわたり重役として米国トヨタとレクサスに務め販売業務で実績を上げ、その後に独立し経営コンサルタントとして多くの企業の経営を改善させた。
 同劇場は、能、歌舞伎、文楽など伝統芸能の観劇ができる全米に比類ない設備を誇る。舞台には、幕はカーテンではなく緞帳、両側に花道を設け、能、歌舞伎用の所作台を備える。歌舞伎役者、中村勘三郎はニューヨーク公演の際に、同館から送られた所作台の上で演じたという。
 古典芸能や文化に限らず、従来通りJポップや映画など、地元のみならず日本、全米からのアーティストに発表の場を提供し「敷居の高くない劇場」を目指すという。だが、説明会の参加者から使用料がトーレンスなどのそれに比べ、割高で借りづらいと指摘を受けた。さらに、長い行列のできる女子便所の不便性やスタッフのサービスなど、さまざまな改善を求められた。
 二世週祭の紅白カラオケ歌合戦を主催する菊地日出男さんは、第1回から一昨年までの24年間ずっと、同劇場で開いてきた。昨年、やむを得ず会場をLA郊外に移したが使用料は約2000ドル安い上、スタッフのサービスもずっとよかったという。日米劇場を愛し今年2年ぶりの開催を検討する菊地さんだが、この日の説明会に日本舞踊の師匠など文化の担い手と、カラオケの歌手が呼ばれていないことに首を傾げた。「日本文化を育てるなら、使う人の気持ちになって安くしてもらわないと困る。みんな日米劇場を使いたいのに」と嘆いていた。
 日系社会からの要望と寄付により、コミュニティーのために建設された日米劇場。なのに昨年の突然の休館時には、文化会館側からは明確な説明がなく、会員や寄付者、利用者などの多くが不信を抱いた。ウィリス館長は「これからは、みんなの声を聞いて運営に役立てたい。今日は、コミュニティーの貴重な意見をたくさん聞けて意義のある説明会だった」と述べた。【永田潤、写真も】

Leave a comment

Your email address will not be published. Required fields are marked *