カリフォルニア州高速鉄道局(HRA)は2日、加州を南北に結ぶ高速鉄道計画の総工費をこれまでの985億ドルから684億ドルに大幅削減し、全線開業時期も従来目標の2033年から28年に5年間短縮する修正案を発表した。
 総工費の大幅な見直しに関しては、マーセドからサンファナンドバレーまでの区間で既存の路線を活用することで、削減が実現する。
 2009年時点では、同計画の総工費は約426億ドルと見積られていた。しかし、資金繰りを再検討したところ工期延長が避けられず、インフレも厳密に計算した結果、工費が膨らんだ。
 昨年11月には総工費は当初の倍以上に増額され、強い批判が出たため、ジェリー・ブラウン州知事が修正を求めていた。
 マイケル・ロッシHRA理事(元あおぞら銀行最高経営責任者)は、雇用確保や環境保全などの面で「現実的で透明性が高く、信頼できる計画改定」であることを強調した。同理事は高速鉄道推進派のブラウン知事の雇用問題担当顧問で、加州事業推進の中核を担うことで知られる。
 反対が根強い関連起債27億ドルをめぐり、今後の加州議会承認をめぐって綱引きが活発化しているが、HRAのダン・リチャード理事長は「今回の修正案は、高速鉄道計画をさらに安く、早くすることを可能にするものである」と述べた。さらに各自治体の交通網の向上に役立ち、当初の予定より30億ドルも総工費が削減されることから、長期的に見ても最善の案であることを強調した。
 ブラウン知事も「今後10年でカリフォルニア州民はセントラルバレーからロサンゼルス間を、車で移動するときよりも半分の時間で行き来できるようになる」と述べ、修正案に自信を示している。
 HRA当局によると、28年の全線開通を待たずに、加州中部マーセドからサンファナンドバレーまでの区間が22年をめどに先行開業する予定。全線開業時の平均片道運賃は約81ドルと空路に比べ割安に設定している。年間利用者数の見積もりは580万人から1050万人と幅広い。
 加州の高速鉄道計画はサンフランシスコからアナハイム間を結ぶ計画。最新の技術を駆使し、時速220マイル、2時間40分の走行時間で加州を南北に結ぶ。全米最長の高速鉄道路線となる同計画は、日本の官民も受注を目指し、注目している。
 当局は高速鉄道の利点として、鉄道利用による交通渋滞の軽減、移動費用の低コスト化、排気ガスによる二酸化炭素排出の削減、建設工事に伴う雇用の創出などをあげている。加州の2月の失業率は10・9%で、200万人以上が失業中で、カリフォルニア労働組合連盟も同計画が雇用の増加につながるとして賛成の意向を示している。
 修正案はまずHRA当局が最終承認し、その後州議会での承認が必要となる。HRA当局は12日に同案を承認するかどうかの審議を行う予定。  

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