連邦最高裁は25日、アリゾナ州が不法移民の取り締まり強化を目的に2010年に制定した移民法(SB1070)の大部分を憲法違反であると判断した。オバマ政権の主張をほぼ受け入れた形となったが、警官による移民の在留資格確認に関しては認める判断を下した。
 同裁判は、メキシコなどからの不法移民の増加により州内の安全が犯されているとして、アリゾナ州が2年前に取り締まりを強化する新たな移民法を制定。これを受け、オバマ政権が「州政府の権限を越えている」として同法の撤廃を求めていた。
 アリゾナ州のSB1070は①移民に対し合法的に滞在していることを証明する書類の携帯義務づけ②不法移民による求職や就労は違法③不法滞在の疑いがある移民は令状なしに逮捕できる―といった厳しい内容だったが、最高裁はこれら3つを違憲とした。
 最高裁が唯一容認したのは、交通違反や罪を犯した捜査対象者や不法滞在の疑いがある移民に対し、警官が在留資格を確認できるというもの。しかし、それにより発覚した移民法に関する軽い罪で逮捕することは禁じられている。在留資格確認に関しては、ヒスパニック系住民などから「人種差別的な取り締まりにつながる」として強い反発の声が上がっている。
 最高裁の判断を受けオバマ大統領は同日、主張が大筋で認められ「喜ばしい」との声明を発表した。しかし、在留資格確認が人種差別捜査につながる可能性を指摘し懸念を表明。連邦議会は今後、包括的な移民改革に取り組む必要があると強調した。
 ロサンゼルスのアントニオ・ビヤライゴーサ市長は、「部分的勝訴」と最高裁の判断を称賛。「移民法規制は連邦政府のみに権限があるという憲法原則の基盤を支持したもので、(アリゾナ州の移民法に)異議を唱えたオバマ政権と司法省の判断は正しかった」と述べるとともに、警官による移民の在留資格確認は、「警官と市民の信頼関係に亀裂が生じる可能性がある」と危機感を募らせた。
 一方アリゾナ州のジャン・ブリューワー知事(共和党)は、「州民を守るという州の責任を信じるものにとっては勝利だ」と最高裁の判断を歓迎した。
 アリゾナ州が同移民法を制定して以来、アラバマ、ジョージア、サウスカロライナ、インディアナ、ユタの5州が同様な移民法をそれぞれ制定している。
 11月に行われる大統領選で移民問題は主要争点の一つにあげられており、オバマ大統領は今月15日に、親に連れられ子供の時に米国に入国した不法移民のうち、高校卒業など一定の条件を満たした人に対し、強制送還の対象外にする内容の新政策を発表したばかり。

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