
米国務省のインターナショナル・ビジター・リーダーシップ・プログラムで訪米中の京都女子大学・現代社会学部教授の嘉本伊都子さんと、ロサンゼルス在住の国際結婚した日本人女性6人がロサンゼルス郊外のウエスト・ヒルズで9日、国際結婚とハーグ条約についての座談会を行った。参加者は国際結婚に伴う諸問題や自身の体験談など意見を交換し合い、ハーグ条約への理解を深めた。
同プログラムはハーグ条約についての見識を広めることを目的に3週間の日程で実施された。嘉本教授は訪米中、日本人妻に子を連れ去られた夫たちのほか、全米各地でこの問題を扱う判事や弁護士、社会学者らとも面会した。
近年、国際結婚が増えるにつれ、それに伴い離婚も増加。子供がいる場合は結婚生活の破綻後に、一方の親がもう一方の親の同意を得ずに子を連れて母国に帰る「子の連れ去り」と呼ばれるケースが急増した。特に米国人の夫と日本人の妻との間で発生する事例が多いという。
しかし、国際結婚が破綻した際の子どもの扱いを定めたハーグ条約に日本が未締結であることから、日本は「(子の)連れ去り天国」とも言われているという。
同教授によると、米国には警察のほか民間団体でもドメスティック・バイオレンスなどの家庭内トラブルを相談できる機関が多いにも関わらず、その存在を知らないもしくは利用しない日本人女性が多く、相談する以前に子どもを連れて帰ってしまうケースが多いのだそうだ。その背景には家庭内の問題を他人に話すことに慣れていない日本人特有の習性があるのではと分析する。
親権問題に関しては、日本では離婚後、家庭裁判所が母親に親権を与えるケースが8割であることから、「母親が子どもを引き取って当然」という日本人の感覚から、母親が子を連れて日本に帰国する例が多いという。
一方、米国では互いの言い分を聞き、それをふまえて親権を決める場合がほとんどであるため、こうした日米の違いが子の連れ去り問題に大きな影響を及ぼしていると同教授は指摘する。
このような問題に対し、座談会の参加者からは「日本人女性のほうにも問題があるのでは」との声が目立った。
参加者のひとりで日本のハーグ条約締結には賛成だという令子・キリルさんは、同氏が結婚した当時(1960年代から70年代)は国際結婚がまだ今ほど一般的ではなく、多くが両親からの反対を押し切って結婚しており「今よりもっと(国際結婚に対して)慎重だった」と振り返る。
結婚が破綻したらすぐ帰国すればいいと安易な考えのもと国際結婚するのではなく、それなりの覚悟をもってしてほしいとの意見が多く聞かれた。【吉田純子、写真も】