日米文化会館の今後について語る同理事会議長のサンディー・サカモト氏(左)とビル・ワタナベ暫定CEO(写真=マリオ・G・レエス)

 小東京にある日米文化会館(JACCC)の前館長(CEO)グレゴリー・ウィリス氏の辞任を受け、同館理事会議長のサンディー・サカモト氏とビル・ワタナベ暫定CEOが18日、羅府新報の取材に応じ、コミュニティーの信頼回復に向けあらためて誠意を尽くすと約束した。
 ウィリス氏は、フランスで盗品所持、企業資金乱用、資金流用による倒産の罪に問われ、審問に出廷しなかったため国際逮捕状が出ている。同国の裁判所は2009年9月8日、本人不在のまま同氏に禁錮5年、罰金2000万ユーロ(約2500万ドル)の有罪判決を言い渡した。また、カナダでも自動車部品工場2社の閉鎖などに関し2件の裁判で訴追されていると地元メディアは報じている。
 これらウィリス氏の過去と同館CEO辞任との関係は明らかにされていないが、「NCRR(Nikkei for Civil Rights and Redness)」が同氏の過去に関し解明を求める書簡をJACCCに送付後、同氏は8月22日に辞任を表明している。
 サカモト氏とワタナベ氏は18日、ウィリス氏をはじめJACCCの従業員など個人に関することは一切コメントできないと前置きした上で取材に応じ、一連の騒動に関してコミュニティーの懸念や不安、怒りに理解を示し、理事会の責任を認めた。
 サカモト氏によると、CEOの人選に利用した雇用斡旋業者「ジョンストンカンパニー社」から近日中にサービス料全額の払い戻しがある予定といい、同社のマキシン・ジョンストン代表からはJACCCへ寄付の申し出もあったという。
 さらに、同サービス料は「理事会メンバーの1人からの寄付で、日米文化会館から支払われたわけではない」と強調。返金の申し出を受けた寄付者の理事は、全額を同館に寄付すると話したという。寄付者は匿名を希望している。またサカモト氏はサービス料の額を公開しないとしたが、「非常に妥当で、謙虚な額だった」と述べた。
 理事会はなぜ、非営利団体運営の経験や日本文化やアートの知識、小東京の日系社会との関連がまったくない人物を同館CEOに採用したのかとの問いに対し、「JACCCは一見、日本文化の継承やアートの紹介を提供するだけの組織に見えるが、それ以外にも(日米)劇場の運営やテナント管理、イベントの主催などを行っており、CEOにはさまざまな能力を兼ね備えた人物、さらにわれわれを次の段階へ導いてくれる人物が適任だった」と述べ、人選はこれら条件に基づき決定されたものと述べた。
ワタナベ暫定CEO(右)とキース・シオザキ副館長(写真=マリオ・G・レエス)

 4週間前に暫定CEOに就任し、現在パートタイムで勤務するワタナベ氏は、「今後同館は助成金や寄付金以外からの安定した収入を得る必要があり、そういった意味で理事会は文化やアートのみならず、経営を理解している人物を探していた」とサカモト氏の意見を支持した。
 また、前館長の管理下で「8人以上の従業員がレイオフされた」との報道に対し、「レイオフはなかった。各自自主的に退職した」と述べ、この期間に退職した従業員には復職の希望があるかどうかを聞いているという。
 今回の件も踏まえ、次のCEO人選には雇用斡旋業者を使わず、コミュニティーメンバーの力を借りながら適任者を見つけていく意向と述べ、すでに理事会内に人選委員会を設立。早ければ10月1日には雇用告知を始め、年内までには新CEOを採用する予定だとした。
 人選委員会の委員長には今年始めに同理事に任命されたジェフ・フォリック氏を選任。ワタナベ氏によると、同氏は敬老引退者ホームをはじめ、オレンジ郡仏教会の理事を務めるなど日系社会に精通しているとし、娘さんのエミリーさんは今年の二世週女王に輝いている。
 信頼を失いつつあるコミュニティーに対し、サカモト氏は「今後予定されている文化イベントなどを通じ、再びコミュニティーともに歩み続けたい。これら課題をチャンスに転換し、より力強く前進したい」と述べ、現時点で理事会議長を辞任することは考えていないと話した。また、今までに多くの日系団体の代表らが支援を申し出てくれていることに感謝し、これを教訓にさらに団結して乗り越えたいと今後の抱負を述べた。【中村良子、グエン・村中】

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