この世の中には銀行にする貯金と、天にする貯金の二種類があることを、「祈り」(白鳥哲監督)という映画で教えられました。
 銀行に貯金するものはお金や財産ですが、天に貯金するものは、私たちの身近にある感謝の気持ちや他人を思いやる行為などの目に見えないものです。
 こういった天への貯金は自分だけが独占する貯金ではなく、他人が困った時にでも使う事ができ、しかも溜めるほど利息というおまけが付いてきます。
 それは素晴しい出会いという利息かもしれませんし、湧き上がる勇気という利息かもしれません。
 私たちは独りでは生きていけませんので、そういった目に見えない貯金や利息を分かち合って生きていると考えると、今住んでいる世の中がいかに希望や感謝に満ちているかということに気づかされます。
 本当に大切なものは目に見えません。
 心も、魂も、感謝の気持ちや愛するという感情も目には見えませんが、私たちは確かにそれらを操ったり、授けたり、頂いたりします。
 たぶん私たちの体は、目に見える栄養や水を体に入れるだけで生きている訳ではありません。
 一人ひとりが天に貯金をして、一人ひとりが天からの貯金を使って暮らしています。こういった目に見えない心の栄養が私たちを生かしていると考えると、誰でもやさしい気持ちになります。
 昔から日本には「ありがとう」「もったいない」「おかげさま」「いただきます」などという英語には十分に訳すことができない気持ちを孕んだ言葉があり、そのことが日本が世界の役に立ち尊敬される国である理由にもつながっていると、筑波大学の村上和雄教授は言います。
 これらの日本の伝統や文化に基づく魂を含んだ言葉は、すなわち天への貯金となり、たくさんの利息を生み、大きな役割をはたしてきたからだと思います。
 ですから、生きてきた多くの経験や知の財産がある人は、惜しまず天への貯金をすることが望まれます。【朝倉巨瑞】

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