訪問着について説明する押元さん(左端) ©Tak S. Itomi
 ハリウッドを拠点に映画撮影用の着物コスチュームの提供や、伝統の正装からモダンに至るまでの着付け、デザインを創造する「着物末広エージェンシー」(押元末子社長)はこのほど、アラスカ大学アンカレッジ校を訪問し、着物の文化紹介イベントを催した。レクチャーと着付け、ファションショーを組み合わせたイベントは、同校が日米桜寄贈百周年記念の一環として開いた。
着付けの披露で生徒をモデルにし、振袖に花嫁の色打ち掛けを着せた ©Tak S. Itomi
 着物の普及に努める末広は「米国人が理解しやすく、興味を持ってもらう」をモットーに、各所でユニークなイベントを開いて、業界の芸術家や一般からの意見を取り入れ、作品作りに反映させている。今回のイベントでは、それら培ったノウハウを随所で生かし、独創的なコスチュームを紹介した。
 ファッションショーのモデルは、同大学で日本語を専攻する学生を中心に現地の13人を起用。普段着の小紋(こもん)をはじめ、訪問着、黒留袖、鮮やかな振り袖を身にまとい、次々にステージに上がった。押元さんがデザイン・制作し、俳優、女優などが着用する斬新な着物コスチュームが登場すると、会場からは感嘆の声が上がった。羽織袴を着た男性モデルは、侍風に凛々しくポーズを決めるなど会場は大いに沸き、最後は芸者姿を優雅に披露し、華やかなショーを締めくくった。
 デモンストレーションでは、ステージディレクターの寺内健太郎さんら着付け師のスタッフがヘアメイクを行い、振袖の着付けを行った。小物を1つひとつ分かりやすく説明し、桜寄贈事業のテーマにちなみ、桜の花をイメージした変わり結びも披露した。レクチャーでは、モデルが着用した着物の種類や歴史、基本的な知識を押元さんが約1時間講義した。
 アラスカには着物の販売店や着付け教室もないためモデルを務めた大学生は「初めて今日、着物を着ることができてとてもうれしい」などと、大喜びだった。

コスチュームコレクション
2013年度の新作発表

 着物末広エージェンシーはまた今月8日、ファウンテンバレーで、「SUEKO OSHIMOTO 2013 Costume Collection」と題したファッションショーを開催し、来年向けの新作品を発表した。
 クラシックの伝統美を踏襲しながら、新たな要素を取り入れ、新旧を巧みに融合させたデザインを完成させる押元さん。伝統の「着付け師」とモダンな「コスチュームデザイナー」の二刀流で、斬新な色使いにも定評がある。
 今回のコレクションは「日本から取り寄せたビンテージの着物や色鮮やかな帯、豪華絢爛な打ち掛けを使い、『クラシック』と『コンテンポラリー』を融合させた『ニュービンテージ』がテーマ」と説明した。
 ファッションショーは、アジア系俳優などセレブリティーが招かれ、レッドカーペットを通って会場入り。ショーの前には、モダン歌舞伎衣装や数種の帯を駆使した着物ダンス衣装に身を包んだダンサーが、日本舞踊とヒップホップダンスをミックスさせた創作ダンスを披露し、500人の観衆を魅了した。
 末広は来春、ブラジル・サンパウロで着物コスチュームのデザインについてのレクチャーとデモンストレーションの開催を予定している。

「SUEKO OSHIMOTO 2013 Costume Collection」で、新作を発表した押元さん(中央)とモデル

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