NAMIサウスベイ支部日本語サポートグループの発起人、植木ちあきさん(左)とオーガストソン尚子さん

NAMIが提供する情報などについて、日本語で情報交換している

 全米精神疾患患者家族会(NAMI、本部バージニア州アーリントン)のサウスベイ支部内にこのほど、日本語による家族サポートグループが発足した。統合失調症や躁鬱(そううつ)病などといった精神障害者の家族を支援する目的で、精神疾患専門の看護師や元ソーシャルワーカーなど専門家を招き、毎月第2月曜日午後1時半から、レドンドビーチで会を開いている。【中村良子、写真も】
 
「本人はどれほど大変か」
息子の発症を機に学ぶ

 
 日本語支援グループ発起人の植木ちあきさんの息子は、20歳の時に統合失調症と診断された。「最初は、息子の理解できない行動や態度に戸惑いました」。その後統合失調症について勉強し、頭の中の生化学物資のバランスが崩れたり、神経回路の異常によりこのような行動が起こるのだと分かった。「本人はどれほど大変だっただろうと心が痛んだ」という。
 「この病気は症状に波があり、安定していると思っているとまた症状が悪くなり、こちらもそのたびに振り回されてしまいますが、自分しか一緒にいてあげられる人はいないと思い、徐々に社会から孤立した状態になっていました」。そんな時、NAMIのサポートグループで同じく精神疾患の家族を持つ人たちと出会い、「ひとりじゃない」と思えたという。
 35歳になった植木さんの息子は現在、サンディエゴのボーディングケアホームで生活している。植木さんは、「息子と離れ、自分の時間が持てるようになった今、今までの経験をこのまま埋もれさせたくないという思いと、この気持ちを誰かと分かち合いたいという思い、また多くの人に精神病の正しい知識を持ってもらいたいとの思いに駆られ、日本語グループの発足を決めました」と話す。
 
薬で症状に落ち着き
診断から9年、一時は100人の声も

 
 NAMIの会合で出会い、植木さんの趣旨に賛同、発足に協力したオーガストソン榎本尚子(たかこ)さんの息子は、15歳の時に突然成績が下がり始め、好きだったサッカーもやめ、家に閉じこもるようになったという。
 「初めは反抗期だと思っていたけれど、そのうち幻聴が始まり、聞こえる声の命令に従わなければ体中の神経を針で刺すような痛みに襲われると言い出し、統合失調症と診断されました。診断から9年が経った今は落ち着いていますが、過去ひどい時は100人以上の声が聞こえることもあり、その声に従ってプラスドライバーで肺を60回刺してしまうこともありました」
 オーガストソンさんは、「まさに『対岸の火事』で、家族に起こるまで精神病のことなんて何も知らず、この時初めて必死に情報を集めました」と振り返る。
 
発症は10代半ばから30代
思春期重なり診断に遅れも

 
 精神疾患の主な症状は、(1)ろう人形のように表情がなくなる(2)支離滅裂な言動を繰り返し、会話が成り立たなくなる(3)人との交流を避け内にこもる(4)両面感情を持ち、決断ができなくなる―などで、原因ははっきりと分かっていない。
 統合失調症の場合完治はしないが、薬により症状を抑制することができる。また、ここ30年で精神障害の研究も進み、リハビリ法なども成果をあげ、生活の質を上げていくことが可能になったという。発症するのは大概10代半ばから30代で、それまではごく普通の子供であることがほとんど。発症の年齢が思春期と重なることから、精神障害との診断に遅れがでることも多いという。
 同ミーティングには、必要に応じてロサンゼルス郡メンタルヘルス局の荒井良直看護師や元ソーシャルワーカーの松島義博さんら専門家を招き、参加者の質問や疑問などに答えてもらっている。荒井看護師は、「看病している家族が患者のさまざまな言動に振り回され、精神的に疲れてしまうことが多々ある。同じ境遇の中で頑張る家族同士が支え合うことは大切」と、同会の重要性を強調する。
 
NAMIウォークにも参加
企業や団体からの寄付も募集

 
 会では、会員の心のサポートのみならず、ボーディングケアホームや保険、薬などについての情報交換や、NAMIが毎年10月に行う資金集め運動「NAMIウォーク」への参加などを行っており、寄付の協力をしてくれる企業や団体などを募集している。
 2人で発足した同会はすでに15人の会員を抱えるまでになり、遠くはサンディエゴやパームデールなどから参加する会員もいる。植木さんは、「病気が病気だけに、周りの人に気軽に相談できないことが多いので、同じ悩みを持ったもの同士、『ひとりじゃない』と希望を持ちながら支え合っていけたらいい」と、参加を呼びかけている。
 NAMIサウスベイ支部日本語サポートグループの連絡先は植木さんまで、電話310・372・0981(自宅)または310・227・9352(携帯)。NAMIのホームページは―
 www.nami.org

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