「エル・エル・シー? エル・シー・シー?」と舌をかみそうになりながらも昨年、新しい言葉が日本に入って来た。日本でも格安航空会社(Low Cost Carrier)が次々と国内便の運航を開始し、その総称として、LCCという言葉が頻繁に使われ始めたのだ。
 荷物を預けたり座席を指定したりすれば余分に費用がかかり、飲み物ひとつタダではないのがLCC。その上、東京発着は現在、都心から遠い成田空港のみと、これまでの国内線航空機利用の常識からはかけ離れている。が、運賃が通常の航空運賃の5分の1ほど。新幹線よりも長距離高速バスよりも低価格なのは大きな魅力で、利用者、再利用者を獲得しつつある。
 どういう仕組みか日本では、早くから予定の立つ限りはパッケージツアーを利用すれば驚くほど安く旅することが出来る。目的地まで飛行機で往復しホテルに2泊しても、その費用が片道分の通常航空運賃より安いというのは珍しくない。また、航空券だけで済ませたいなら、「旅割」「先得」などと呼ばれる早期購入割引を利用すれば、当日購入に比べて半額以下も可能だ。しかし、急に出かけなければならない場合は、それらの利用は無理。そんな時にLCCは、まさに救いの神となり得る。
 東京に住む従姉妹に昨年暮れ、郷里福岡から伯母の訃報が届いた。世話になっただけにその葬儀に参列したいが、日帰りをする飛行機代と香典、併せて10万円近い出費は厳しい。その時思いついたのが、今話題のLCC。急ぎインターネットで予約を入れ、翌日は始発電車を利用して成田へ向かい、葬儀終了後に福岡空港へ急ぐと、その日のうちに帰宅出来た。驚いたことに一週間後、またも郷里から訃報が届いたが、再び喪服でLCCに乗りこみ、葬儀に参列したのだった。
 昨年3月に運航を開始したLCC、ピーチは全日空の出資。続いて日本航空とカンタス航空が共同出資して7月からジェットスターが飛んでいる。他にエアアジアなどもあり、2012年は日本のLCC元年となった。
 低価格が嬉しいLCCだが、安全運航を維持しながらこの価格がどこまで続くか。2年目の今年が注目される。【楠瀬明子】

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