本社こそシカゴへ移ったが、シアトルがまだボーイングの町であることは変わらない。最新鋭機ボーイング787は、シアトル郊外エベレットで最終組み立てが行われる。親がボーイングで働いている、いや祖父さんの代から働いていたなど、ボーイングに何かしらの縁を持つ、飛行機大好き人間の多い土地だ。
 わが家の夫もそんな飛行機ファンの一人。エアバスが新型機を飛ばした時は、乗ってみたいばかりに遠回りして目的地へ向かった。B787が全日空の国内線に就航した時は、嬉々として羽田から乗り込んだ。
 全日空は、B787開発にあたり第1号機を発注した航空会社だ。昨夏開始の成田―シアトル路線も、その最新鋭機で運航というのが目玉で、10月には華々しい歓迎のうちに787が成田から初飛来。私も日本から戻るときに787の飛行を体験した。機内の気圧や湿度にも注意が払われ、耳がツーンとならず喉の渇きも少ない快適設計。しかしそのためか、着陸時は窓に結露が生じ外が霧のように見えた。飛行中コックピットガラスにヒビが入ったとの報道には、気圧調整が難しいのではと気になった。
 その後バッテリー発火が起きて、787は運航停止となった。数日間かと思えば、それが数カ月となり、今では先が見えない。
 シアトル経済にとっても航空ファンにとっても、FAAがいつ運航再開のOKを出すかは重大関心事だ。ボーイングに部品を納める日本の各社にとっても同じことだろう。運航停止によって全日空シアトル路線は隔日運航となるなど、こちらの影響も計り知れない。
787は、機体の重量軽減のために、これまで油圧で動かしていた操縦系統を電気モーターで動かしているという。当然、従来より電気系統の担う役割は増えている。バッテリー発火は、バッテリー自体の欠陥か、電気系統に問題があってバッテリーに過度な負担がかかったためか。原因が解明されて対策が講じられるまで、運航再開は無理だろう。
 早い運航再開を望むものの、安全を確信するまでは乗るのは怖い―親の介護などで日米間を往復することの多い今の私の、正直な気持ちだ。【楠瀬明子】

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