雅子氏(右)の指導のもと、振付けを練習する参加者たち
 日本舞踊の西川流三世家元・西川右近の長女、西川雅子師範とその息子、西川カーク師範が10日、国際交流基金ロサンゼルス日本文化センターで日本舞踊とメーキャップについての講演を行った。およそ100人の参加者を前に、日本舞踊の歴史について説明。メーキャップや着付け、振付けの実演も行われ、日本の伝統芸能を紹介した。
下唇は舟底のように、上唇はかもめのように小さく紅を塗る雅子氏
 西川流は今からおよそ220年前、江戸(現在の東京)で創設された。現在では生徒の育成だけでなく、日本をはじめ世界各国で講演会を催すなど、日本の伝統芸能の伝承に励んでいる。
 講演会では、日本舞踊および西川流の歴史、歌舞伎との違いなどについて説明。参加者は日本人だけでなく、当地の米国人の姿も多く、普段なかなか聞くことができない話に真剣に聞き入っていた。
 メーキャップの実演では雅子氏が素顔の状態からベースメイク、眉つぶし(眉毛を目立たなくする)、おしろいを塗る工程まですべて披露。
 オーガニックのオイルを顔全体になじませ、カルシウムの粉末が入ったおしろいを塗り、目の際には赤色を加える。「昔の日本の女性はおとなしかったから口紅も小さめに塗るんです」そう話すと会場からは笑いが。こうした工程の一つひとつが米国人にとっては新鮮で、参加者からは多くの質問が飛び交った。
 着物とかつらを着け、最後に手にもおしろいをぬって出来上がり。着物は重いものでは約13キロ、かつらは3キロの重さがあるといい、これらを身にまとって踊る。
 準備におよそ3時間かかる日本舞踊と違い、米国のダンスのステージメーキャップの時間はおよそ30分。「丁寧に仕上げていく工程はとても美しかった」と語るダンサー兼振付け師のソニア・へニーさんは、講演会に参加し日米の舞台の違いを肌で感じたようだ。
 メーキャップと衣装が仕上がり、振付けの一部を参加者に伝授した後は、雅子氏自らが日本舞踊を披露。その美しい舞いに参加者からは「もっと見たかった」との声が多く聞かれた。
 西川流は1984年と88年にLA公演を行っている。「家元だからこそできることがある」。そう語る雅子氏は、「海外で頑張る日本人の役に立ちたい」と力を込める。LAには日本舞踊のほか、茶道など日本の伝統文化の継承者が多いため、訪米することで、当地で学ぶ日本人の役に立てるのではないかと考えた。「今後はLAでも教室を設け、日本舞踊の継承に励むほかの流派のお手伝いなどもできたらうれしい」と抱負を語った。【吉田純子、写真も】

Leave a comment

Your email address will not be published. Required fields are marked *