アンテロープバレーで先月、63歳の女性がジョギング中に放し飼いのピットブルなど4匹の犬に襲われ亡くなる傷ましい事件が発生した。警察によると、女性の体には150から200にもおよぶかみ傷が全身に確認されたという。
先月末、この女性を襲った4匹を含む計8匹の犬を飼っていた29歳の男が殺人罪で起訴された。有罪が確定すれば、最高で終身刑が言い渡される。
驚いたのは、女性が襲われる前からこの男が飼う犬が人を襲う事件が少なくとも3件発生しており、住民から苦情が出ていたということ。その間、アニマルコントロールは何も対処しなかったのだろうか。「前兆」があったにもかかわらず、1人の尊い命が奪われるまで行動を起こさない、もしくは法的に起こせないのであれば、大きな問題だ。
ピットブルなどといった特定の犬種による襲撃事件は、残念なことに毎月のように耳にする。そのたび、「ピットブルをペットとして飼うことを禁止すべき」「犬種だけで判断するのは不公平。犬ではなく飼い主の責任」という議論が必ず繰り広げられる。北アイルランドをはじめ、一部地域ではピットブルの飼育を禁じているところもある。
育て方、管理の仕方次第でピットブルでもペットとして人間と共存できると思うが、かつて闘犬として繁殖された同犬は誰にでも扱える犬ではない。その特性を徹底的に理解した人のみに飼われるべきである。
前回の磁針にも書いたように、どんな犬種であっても、飼い主の育て方ひとつで犬は「凶器」に変貌する。特に闘犬のような力のある犬種は、飼育を免許制または許可制にしてはどうだろうか。民間のレスキュー団体からアダプトする時のように、専門家による面談や自宅調査を徹底し、犬種の特徴やしつけの仕方などを学べるクラスを受講した人のみに資格が与えられるようにすべきだ。
これにより襲撃がなくなるとは思えないが、現在のように犬種の知識が全くない人でも、誰でも飼える野放し状態にしておくのは、いくら何でも危険過ぎる。【中村良子】