新美総領事(右)から表彰状を授与された巽氏
 在ロサンゼルス日本総領事館は10日、ハンコックパーク地区にある同領事館公邸で「ターミナル島民会」前会長の巽幸雄氏に対する総領事表彰の授与式を行った。巽氏の家族や友人などが見守る中、新美潤総領事から表彰状が手渡され、同氏のこれまでの功績をたたえた。
 授与式では新美総領事より巽氏の生い立ちが紹介された。同氏は1920年8月、カリフォルニア州ターミナル島の漁港に隣接した、イースト・サンペドロ(現在のターミナル島)で生まれた。ターミナル島の小学校に通い、33年に父が亡くなった後は、母が同氏を連れて日本に帰国。父の故郷である和歌山県下里の商業高校に進学した。卒業後はターミナル島に再び戻り、40年にサンペドロ高校で米国の教育課程を修了した。
 高校卒業後は、簿記係として働き始めるが、その後、船の乗組員に転職。
 第二次大戦の勃発後、日系1世の漁師たちはターミナル島の施設に拘留されたため、同氏は政府の要請で、彼らが移動させられるまで同施設で通訳を務めた。
 その後、マンザナ収容所へ送られ、この時期に千恵夫人と結婚。長女、幸子・ジーンさんを授かった。
 45年に収容所から解放された後は、ロサンゼルス市に居住。再び船の乗組員として働き始め、長男のメル・一郎さんが生まれた。
 52年には漁業をやめ、スーパーマーケットで生産販売員の職に就き、その4年後、ロングビーチ市にあった日本食料店「オリエンタルフードマーケット」を買い取り、82年に売却するまでの26年間、千恵夫人と共に運営した。売却後は、「カリフォルニアライスカンパニー」で販売顧問として、退職するまで勤め上げた。
 71年にはターミナル島の友人と共に「ターミナル島民会」を設立。同団体は敬老引退者ホーム設立時に資金援助を行うなど、日系諸団体の支援に尽力し、日系社会の発展を目的に活動している。
 新美総領事は同氏の受章理由を「同団体の副会長を14年、その後84年から2011年まで会長を務め、日本文化の普及に努めてきた」と言及。さらに02年にターミナル島の一角にある鳥居と「漁師の像」記念碑を中心とした「ターミナル・メモリアル」が落成した際は、10年間におよぶ保全活動に取り組んだことなどをあげ、ターミナル島の歴史を後世に伝えるため活動を続ける同氏の貢献をたたえた。
 日系3世で自身の父もターミナル島の漁師だったテリー・ハラLAPD副本部長もこの日出席し、「巽氏は同氏のお父さん同様、コミュニティーのために尽力し、素晴らしい人格者である」と称賛。栄誉を祝福した。
 巽氏は受章を受け、出席者たちに感謝の気持ちを述べ、ともに喜びを分かち合った。
 総領事表彰は、在外公館の任務の遂行に協力し、諸外国との相互理解および友好親善の促進等、特に推奨するに値する顕著な貢献または善行を行ったと認められる個人または団体を顕彰する目的で行われている。【吉田純子、写真】
表彰状の授与を喜ぶ巽氏(前列左から4人目)と祝福に訪れた友人やコミュニティーの代表者

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