80歳という世界最高齢でのエベレスト登頂を果たした冒険家の三浦雄一郎さんは峰の頂で見えたものを記者団から問われ「人生、夢を見て、あきらめなければ実現できる」と応じていた。
三浦さんの今回の挑戦はアンチ・エイジングがテーマだったそうで「80歳でもまだまだスタートだと思えば、人生が面白くなる」とも述べ、この言葉は高齢者層の人々に対する最高のエールだったと思う。
もっとも、もう一度のエベレスト挑戦の可能性を問われ「もうたくさんだ。これほど疲れ、みんなに面倒をみてもらって、命からがら帰ってきた。しばらくのんびりしたい」と本音も漏らしていたが…。
三浦さんは私たちシニア世代に対し、夢を叶えるすばらしさ、そのためには「夢を見る」ことの大切さを教えてくれた。安倍首相が「三浦雄一郎記念日本冒険家大賞」の創設を決めたそうで、若干政治のにおいがしないでもないが、三浦さんの業績はじゅうぶん値すると思う。
「夢を見る」とは心の問題、すなわち気持ちの問題だ。先行き楽観的な気持ちになれば世の中は自然に明るい方向に向いてくるものではないだろうか。
アメリカ合衆国第32代大統領、フランクリン・ルーズベルトは1933年、世界恐慌期に大統領に就任、経済建て直しのため政府の財政出動によるニューディール政策を推進したことで有名だ。
このとき、不安にかられるアメリカ国民に対し、「恐れるべきものは何もない。私たちは、ただ恐れを恐れているだけだ」と説き、国民の不安を落ち着かせ、次々と景気対策を推進したといわれる。(ただし、本当の景気回復には第二次世界大戦参戦による軍事支出の増大が必要だったようだが)
国家をはじめ、集団のリーダーの重要な役割のひとつは所属するメンバー全員に先行きの希望を持たせること、すなわち「夢を持たせる」ことではないだろうか。
今の日本を見るとき、低迷を続けてきた経済に対し、現政権はアベノミクスによる成長戦略を打ち出しつつある。国民に夢を見せ、景気という「気」が、いつの日か大きく開花するようさらなる努力をしていただきたい。【河合将介】