当時の原木に美しい花を咲かせる「ピース」
 新緑が美しい初夏の日本。東京都調布市にある都立神代植物公園には、現代バラからオールドローズまで409品種、およそ5200株のバラが栽培されている。毎年春と秋にはバラフェスタが開催され、多くの人で賑わう。その中でもひと際美しく咲き誇るバラがある。今から54年前にロサンゼルス市から贈られたバラだ。その花々は今なお残り、見る人の心を和ませている。
原木が今も残る「ルビー・リップス」
 1961年に東京都に新たな公園が誕生すると聞きつけた当時のLA市は、開園2年前の59年、日米親善の思いを込め80品種、986株のバラの苗木を贈った。
 現在は13品種、各10株ほど残っており、贈られた当時の原木が残っているのは「ピース」と「ルビー・リップス」の2品種。他と比べると幹が太く、年月の長さが伺える。
 そのほか、エリザベス2世が即位した翌年の53年、即位を記念して作られ、女王の幼名が付けられた「リリベット」。香りの名品といわれる「レディーラック」。ミイラを作るときに使うハーブの香りによく似ていることから「ミイラの香り」とも称される「ムーンスプライト」。戦後初めて訪日公演をした米国人オペラ歌手ヘレン・トローベルにちなんで付けられた同名のバラなどがある。
 トローベルはサンフランシスコ平和条約が発効した52年に訪日し、自身と同じ名前のこのバラが「日米親善の懸け橋になるように」と東京都千代田区の日比谷公園に自らこのバラを植えた。しかしあまりの美しさにすぐに全部盗まれてしまったというエピソードも残っている。
 LA市から寄贈されたバラは今ではそのほとんどが2世だが、日米友好の証は世代を越えてこれからも受け継がれていくことだろう。 【吉田純子、写真も】


5200株のバラが咲き誇る神代植物公園のバラ園

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