笑顔で質問に答える野茂英雄氏
 ドジャースで大リーグデビューした元投手の野茂英雄氏が10日、ドジャー球場で始球式を務め、独特のトルネード投法で一球を投じ観衆を沸かせた。デビューした時の背番号「16」のユニホームを着て当時を振り返り「スタッフが投げやすい環境を作ってくれた」と感謝した。
恩師のラソーダ元監督(左)と抱き合う野茂氏
 グランドに着いた野茂氏は一番に、デビューした時の恩師ラソーダ元監督にあいさつし、抱き合って再会を喜んだ。大型スクリーンには、三振の山を築いた数々の快投や無安打無得点試合、新人王など球団史に名を刻んだ活躍を振り返る映像が流され、ファンは往時を懐かしんだ。野茂氏の後を追いドジャースに入団した黒田博樹投手(ヤンキース)のメッセージが流され「野茂さんは雲の上の人だった。日本人として初めてアメリカに来て、道を切り開いてもらったので、僕たちがこうして投げることができる」と敬意を表した。
 自身のテーマ曲だった「上を向いて歩こう」が演奏される中、「1995年の新人王、ヒデオー、ノモー」とアナウンスされ、大歓声を浴び登場。現役時代は表情1つ変えず淡々と投げたが、この日は打って変わって、笑顔でマウンドに向かった。大きく振りかぶり体をひねって打者に背中を向ける独特の投球フォーム「トルネード」を久々に披露。捕手を務めたかつてのチームメートのエリック・カルロス氏のミット目掛けて投げ込み大役を果たした。
 始球式前の記者会見で野茂氏は、始球式について「(現役時の)グランドの方が緊張せずに、今日は少し緊張している」と笑顔で答えた。メジャーでの成功については「オマリーさん(当時オーナー)やラソーダさん(当時監督)をはじめスタッフの助けがないと、多分成績は残せなかった気がする。自分がパフォーマンスしやすい環境を作ってくれたおかげ。こういう(始球式)日も作ってもらえた」と感謝に堪えない様子。
大歓声を浴びながら始球式を務める野茂氏
 日本人大リーガーの先駆者で、イチローや松井などが続くことができたのは自身の成功が大きいとされるが「自分ではどうかわからない。僕の活躍が影響したのかは分からない」と、現役時代と同様に自賛することはなかった。イチローについての評価を求められ「長くプレーすること自体、すごいこと。今さら僕がいうこともないくらいの選手になったので、コメントはない」。ダルビッシュについては「上手く自分をコントロールできて、メジャーリーグに対応できている。試合は楽しみにしてみていて、僕よりもレベルが高いピッチングをしている。いい結果を毎年出して偉大な選手になってもらいたい」とエールを送った。
 大リーグでの一番の思い出は「初登板の時で、やはり夢が叶った1年目が印象に残っている」と振り返った。16の背番号のユニホームに袖を通し「もう一度選手としてやりたい気がする」と、デビュー時の挑戦した気持ちを再び味わったようだった。
 ドジャースのベンチコーチ、トレイ・ヒルマン氏は、かつてロイヤルズの監督を務め、野茂氏にとって現役時代最後の監督である。「大人しく、とても控えめで、黙々とハードな練習をこなす選手で、プロ根性を見せつけてくれた」と評した。「日本選手がアメリカでプレーできるのは、ノモの成功がおおきい。今日のノモの始球式は、球団に貢献したふさわしい活躍をしたからだ」とたたえた。
 ラソーダ元監督は「投球のみならず、誰もが尊敬する性格がよかった。ジャッキー・ロビンソンが黒人選手のためにメジャーの壁を破ったように日本人のためにそれをしたのはノモだった。ノモのおかげで他の多くの選手が後に続くことができた」と述べた。
 この日は「ノモ・ヒデオ・ボブルヘッドデー」と銘打ち、ファン5万人に野茂氏のトルネード投法をかたどったボブルヘッド人形をプレゼントし功績をたたえた。【永田潤、写真も】
トルネード投法を披露するヒデオ・ノモ・ボブルヘッド(写真左)と野茂英雄氏(同右)

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