このLAにいると、思いがけないことが起こる。まさかの出会いがあったり、日本にいた時には意識しなかったことを意識させられたり、刺激的なことがある。
今回、全くの偶然から学生の映画撮影に付き合うことになった。日本人の女優さんが着物を着られないと、前日の午後に聞かされ、これから誰かに頼むのは無理があると思い、他人に着せるなど経験はなかったが、時々目にする打ち合わせを反対に着ている人を思い出して、そんなことになったらと思って出かけることにした。
当日会った女優さんにそのことを話したら、知り合いの日本人に聞いて着てみたという写真を見せてくれた。「男はこうだから、女はこれでいいよねと話してこうなったの」心配したとおりの写真だった。
映画は、日本から来た女性が日本文化を伝えたいと思ってやっている折り紙屋さんという設定だったが、用意されたセットはどうみても日本ではなかった。折り鶴だけが日本を思わせた。アジアの東方がまぜこぜになっていて日本のイメージは何? ほとんどがアジア系アメリカ人学生のグループで、どういう理由で日本文化に興味を持って、その中の折り紙を題材にしようとしたのか聞いてみたかったが、時間的に余裕がなかった。
Origamiという言葉はかなり広がっていると思う。私のイメージでは折り紙は誰でも折って楽しめる伝承折り紙の類だが、多分Folding paperやCraftも含めた幾何学的で難度の高いものまで表しているように思う。「折り紙=鶴」もまた一般に受け入れられていると思う。特に、2011年の大震災の後、アメリカ人も祈りを込めて鶴を折った。「折り紙ができる」というアメリカ人は鶴を折れるという場合が多い。
ここで生活していると、これが「日本文化?」と驚かされたり、今回の体験のように、「これが日本文化だろう」と突きつけられると、「えっ?」と違和感を覚える。生活の中ではぐくみ、身につけたものを、その環境にない人たちに教えていくのは難しい。ただ、異文化の中の日本に興味を持つ人たちがいて、知りたいという時には手を貸したいと思う。得がたい体験をした。【大石克子】