不慮の事故により頸椎(けいつい)を損傷し、肩から下の運動機能が麻痺した小東京在住の角野友昭さんを支援するためのイベント「A Night Tomove」が28日(土)午後4時から9時まで、小東京の西本願寺(815 E. 1st St.)で催される。同寺院付属団体「Hui Aikanes」が主催し、集まった支援金は角野さんの理学療法などリハビリの費用に充てられる。
【取材=中村良子、写真=マリオ・G・レエス】
「失ってしまったものではなく、残されたもの、そして新たに得たものにフォーカスを置いて前向きに生きていこう―。こう思えるようになったのも、毎日励ましてくれる友だちや家族がいてくれるおかげ。彼らがいなければ、とっくの昔に諦めていた。運動機能を少しでも取り戻して前向きに生きることが、支えてくれる友だちや家族への恩返しだと思っている」
兵庫県出身の両親のもと、ロサンゼルスで生まれた角野さんは、昨年9月に頸椎を損傷する大けがを負った。3回の手術を受け、集中治療室(ICU)での1カ月を含め、入院は4カ月と長期にわたった。
「ICUでは夢を見ていて、自分の体が麻痺していることに気付くのにしばらく時間がかかった。10代のころから自立した生活を送っていたのに、29歳になって両親や兄弟、友人の世話にならなければ何もできないことが一番心苦しく、申し訳ない気持ちでいっぱい」
事故当時、角野さんの両親は日本へ永住帰国していたが、事故の連絡を受け、母夕起子さんが即日本から駆けつけた。以来、主に1人で息子の介護をしている。身長151センチと小柄な夕起子さんにとって、角野さんの身の回りの世話をするのは容易ではない。起床後のシャワー、着替え、食事など、リハビリに通うための支度には、最低でも3時間は要するという。
5カ月でみえた大きな進歩
麻痺した運動機能を取り戻すには、頸椎損傷後、最初の1、2年が極めて重要だという。家族や友人らの励ましに加え、もともと活発でじっとしていることが苦手な性格だったこともあり、角野さんは退院後毎日のようにリハビリに精を出した。
しかし、保険でカバーされるのは年30セッションのみ。1セッション250ドルもする理学療法を毎日続ける資金はなく、現在はサウスベイにある低価格で理学療法を提供する非営利団体「ネクストステップ」に週3回程度通うが、それでも月1300ドルが必要という。
約5カ月に及ぶ理学療法の成果は大きく、麻痺していた右腕を上下に動かせるようになったほか、座った状態で上半身をしばらく支えることができるようになった。
「母を父の待つ日本へ」
角野さんには、事故以来一日も欠かさず、毎朝励ましのメールを送ってくれる友人や、角野さんにつきっきりの母夕起子さんを思い、交代で介護を申し出てくれる友人、また事故前に飼っていた大型犬2匹を引き取り、面倒をみてくれている仲間がいる。近くに住む兄夫婦をはじめ、ドイツにいる弟、日本にいる父親も、時間が許す限り心身のサポートをしてくれる。
「自分は本当に素晴らしい友だちや家族に恵まれている。この1年間、多少のアップダウンはあったけれど、彼らの励ましのおかげで落ち込んでいる時間はない。ただ、日本での生活をすべて投げ捨て、介護のために再渡米した母のことを思うと、本当に親不孝者だと思う。一日も早く自分が良くなり、最終的には母を父が待つ日本に送り返したい。それが目標」
募金目標額は2万5000ドル
28日の西本願寺での募金イベントの達成目標額は、角野さんの理学療法1年分をカバーできる2万5000ドルで、ディナーを含むイベントの参加費は1人50ドル。会場では、ラッフルチケットの販売やサイレントオークション、ビンゴゲームやエンターテインメントなどが予定されている。イベントの詳細は、電話626・935・9236。またはメールで―
donate@tomove.org
角野さんへの寄付は、随時ウェブサイトからも可能―
www.tomove.org