共同貿易は、これらの大衆食と高級食が並行して、全米そして世界に広まる「二極化」と捉え販売戦略を練る。エキスポでは、従来と同様に地酒、地ビール、超冷凍魚など嗜好性の高い品と同時に、各種冷凍麺や若者に人気のラーメンバーガーの調理器具などの紹介に力を注ぎ、時代の流れに合わせた多種多様の需要に対応する構えを示した。
大衆化による日本食人気の波に乗ろうと、米国内はもとより日本、中南米から食品会社や蔵元などが参加し自社商品の試食・試飲、新製品の販売を促進した。レストラン経営者や投資家、料理人は業界のトレンドや情報収集と意見交換に努め、全90社のうち約50社が日本から参加した。
ゴマの総合メーカー、九鬼産業(本社大阪)は、薬品を用いず圧搾法で抽出したゴマ油を販売する。営業部長の九鬼千尋さんによると、30年前から輸出を行ってきたが米市場の大きさに魅力を感じ、ここ数年、本腰を入れている。「原料にこだわり、独自の焙煎技術について説明すると、客の反応がいい。レストランからのオーダーが取れてよかった」と述べ、「市場を調査して視野を広げ、西と東の両方(海岸)から広めていきたい」と抱負を語った。
共同貿易はまた、商品の販売に加え、日本食を文化として根付かせる方針をとる。衛生など品質管理には特に気を配りセミナーを開き、人材面では、すし学校と酒学校を設立し、それぞれ板前、日本酒ソムリエを養成、エキスパートを業界に送り込んでいる。エキスポでは、各種セミナーを開き、超低温で冷凍したマグロの解体実演、食物アレルギー、ラーメン(スープと麺の相性)、地ビール、地酒、焼酎のフードペアリング、包丁の研ぎ方などで啓蒙した。
最新の情報を発信
山本社長「市場を作りたい」
山本社長は、今回のエキスポについて「大衆化が進むにつれ、出店者の数が年々増えてきた。コンペティションが激しいので、他社にはない新しい物を見つけ、自分たちの味を出しながら競争に勝ち残るという意欲が感じられる」と感想を述べた。さらに「わが社は情報を発信しているが『B to B』(業者対業者) なので、プロにアイデアを提案するのはそんなに簡単ではない」と説明。「今売れている、今流行っているので『どうぞ』は通用しない。これから3年、5年後を見ながら最新の情報を発信し市場を作っていきたい。最新のフードのトレンドをこのエキスポを通じて発信していかなければならない」と話し、イベント開催の意義を強調した。
無限の日本食市場
金井会長「米国から世界へ」
エキスポは1989年に始まり、今年で25回の節目を迎えた。金井紀年会長は開催当初を「アメリカ人は日本食が何なのか分からなかったので、どういうものかを知らせる必要があった」と振り返る。瀬戸物など食器や箸、土鍋などの道具の紹介から始め、2、3年経ってからコメや味噌、醤油など食品を紹介。その後は健康ブームやすし人気を反映し、来場者が増え「レストラン関係者が(フュージョンとして)ヨーロッパの食事にどのように取り入れていこうかと本気で考えるようになり」、メニュー作りの商品開発のためにエキスポに参加するようになったという。
金井会長は米国での普及は、欧米と日本の食文化の違いを知る必要があるとし「ヨーロッパの麦、ミルク、肉、ワインに対して、和食はコメ、豆、魚、酒が基礎。この違いを知ってプロモートしないと方向性を失う」と力説する。自社の今後については「業界全体の流れを常に把握し、エキスポでは『B to B』を続けて情報を提供していきたい」と語る。和食のトレンドは、ニューヨークから世界に発信されることをあらためて強調し「日本食のマーケットは、無限に広げることができる。アメリカに腰を下ろして売って、世界に広めてもらいたい」と希望し、各メーカーの奮起を促した。