関東平野ほど広いロサンゼルス郡を仕事の打ち合わせの連続で、何日もの間、長時間の運転を続けた。
 フリーウエーは至る所で工事中。通常以上の渋滞だ。帰宅して資料を読むにも、運転の疲れと老眼が進み、目がうつろになり、そのままソファーでうたた寝してしまった。
 すると、自然が残る東京郊外に住んでいた幼い頃、アニメの世界のように、空を飛ぶ夢を見た。のんびりした雰囲気の中、畑に囲まれた砂利道を歩く友達の頭上を高さ5メートル程に浮かぶ自分がいた。とてもリアルだった。
 ふと起き上がって思った。人間は、より良い生活向上のため思考し、工夫を重ね、テクノロジーの発展とともに、 太平洋を横断できるほどの飛行機を作った。やがては宇宙までロケットも飛ばした。科学の謎も解明し、医学も進歩した。オリンピック競技の記録も、毎回確実に伸びて人間の体は進化している。
 しかし、人間は、なぜ飛ぶことは出来ないのだろうか?
 鳥には失礼だが、頭脳が発達した人間の方が、いろんなことが出来ても不思議ではないのでは? 人間を見下ろしている鳥は「君たちは飛べないんだね、どうして?」と思っているのかもしれない。
 もし人間がカモメのように空を飛べたら、通勤も楽だろう。一度の飛行で休憩無しで20分ほどでも飛行できたら、渋滞のイライラもない。ちょっとした買い物もできる。お茶をしに海辺のスターバックスまで友達にもすぐ会いに行ける。
 どんなに便利だろうか? そして、どんなに心が癒されるであろうか? そう考えたのも束の間、でも飛べてしまったら、いろいろな弊害も生じるのではと…。交通手段の開発も不必要だ。プライバシーもなくなり、国境を制限することも無理だ。平和になるどころか、社会が混乱し、あちこちで争いごとが勃発するかもしれない。
 進化論や哲学論をするつもりはないが、神様は意図的に人間には羽を与えず飛べないように創造したのだろう。
 コウモリ以外の哺乳類は空を飛べないらしい。そして哺乳類のみ「夢」を見るらしい。つまり、飛べない代わりに「夢」を見られる能力を与えてくれたのかもしれない。【長土居政史】

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