日本で社会問題化している食品の偽装表示。次から次へと出てきて、終わりを知らない。信頼していた老舗の百貨店や一流ホテル、レストランの名が挙がり、さらには、サミットが開催されたり、皇族御用達のホテルでも発覚しショックだ。
 品目を調べてみると、コメ、エビ、サーモン、ウナギ、カニ、フォアグラ、牛肉、豚肉、地鶏、栗、和洋の菓子、各種野菜、うどん、ジュース、パンなどなど。枚挙にいとまがなく、まだまだあるような気がして恐い。
 実際とは異なり、オーガニック、フレッシュ、自家製などと謳ったり、冷凍にもかかわらず「とれたて」と表示し、あたかもその日に捕獲された鮮魚のように装っていた例もあった。産地に関しては、長い年月と費用をかけて質のいい牛肉や果物などを開発してブランドを高めてきた生産者の方々に申し訳なくないのかと、不正を働いた者に問いただしたくなる。
 記者会見での取って付けたような謝罪は、見苦しく呆れる。釈明に努めるが、虚偽は明らかで「料理長の勘違いで、偽装とは思わない」と「誤表示」を強調した社もあった。しかし何十年も毎日、板場に立つエキスパートが和牛と加工肉を間違えることは考えにくく、経営者はそんなミスを犯す職人をトップに据えることもないだろう。
 どこも意図的な偽装を否定するが、業者間で口裏を合わせるなど、組織ぐるみで隠ぺいしていた実態も暴かれた。そんなことをすれば、お節料理の予約をキャンセルされても仕方ないだろう。
 客をもてなすプロの料理人が、消費者を欺いてしまった。信頼を失墜させた汚名返上のために、修業した頃の原点に返って一から出直してもらいたい。こうした偽装に罰則を適用する法改正が叫ばれているが、大問題の解決は個々の意識改革しかないだろう。
 来月、和食がユネスコの無形文化遺産に登録されることが確実であるのに、その本家本元の国で、このような問題が続いてはならない。さらに日本は、質のいい和食材を世界に売り込まなければならない大切なプロジェクトを進めている。国際社会までも裏切ってはならない。【永田潤】

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