各国代表の民族衣装を見て、世界を舞台に戦う上での方向性を再確認できたことが、一番の収穫だという。「華やかで、品があり、日本の伝統的な着物とは違う。ステージで審査員と観衆を魅了させるコスチュームだった」とあらためて、思い知った。4位から優勝までの入賞作品については「伝統にとらわれず、その国々の文化、アイデンティティーを巧みに表現している」と認め「やはり人目を引くためにデザインされていて、あんな風にゴージャスに仕上げなければ勝てない」と話す。
押元さんが今回提供したのは、十二単をモチーフに鶴と松の木をデザイン。約600個のクリスタルをあしらい、伝統とモダンを調和させた着物だった。日本の伝統美を基調とするものの奇抜なデザインは伝統の着物とは、かなりの差異がある。その理由を「外国の人と、(伝統を重んじる)日本人の感覚は違う。この大きなズレがあるので、モダンに仕上げなければ分かってもらえないから」と説明する。
着物の伝統美を尊重し普及
世界で勝つには「モダン」
山野流着装の伝統的な着物の着付けで、基本を忠実に教える一方で、モダン着物の最新スタイルを考案する押元さん。「末広着物エージェンシー」を経営し、ハリウッドで舞台に映画、テレビ、コマーシャル、雑誌、各種イベント(アカデミー賞、グラミー賞の授賞式など)に出演する俳優、女優が着る衣装、主に着物のデザインを行う。着物をドレス風に表現したりし、ファッション性を高め、ダンサーやバレリーナがステージで着用する着物コスチュームを創造し、注目を集めている。
「世界で勝つためには『モダン(着物)』でなければならない」と力説する。その半面、他のモダン着物の多くが「崩しているだけで、形になっていない」と指摘。「モダンは、伝統の着付けの基礎がなければ、芸術的なコスチューム
他方、伝統の着付けでは、約40人の弟子を抱え、稽古を付けては「ただ着せるのではなくて、着る人の年齢に合わせ個性を引き出す着付けを心掛けるように」などと指導。日々の修業で習得した技術に支えられた着付けは「何十、何百通りもある。それらの組み合わせを、着せる人に合わせてどのようにアレンジするかが、着付け師の仕事。そこがまたプロの腕の見せ所でもある」と、奥深さを強調する。
「日本の着物は、すばらしい。日本文化の美しさを世界の人々に知ってもらいたい」と普及に意欲を示す。着物の伝統美を尊重しつつ、モダンを追求し、世界に目をむけた今年は着物のショーに力を注ぐと意気込む。ミス・ユニバースで上位4位の作品について「自分の作品が負けたとは思っていないが、上位はどれも目立っていた」と分析。審査員にアピールするためには、派手なデザインにする必要があると認識するものの「日本の伝統美を失わずに、和の品格だけは、落としてはならない」とし、「伝統とモダン、どちらも日々、学ばないといけない」と、両面の精進を忘れはしない。