『Hollywood』~世界に知れ渡るブランドを持つLA(ロサンゼルス)は、100年前から始まった「映画の都」だ。ディズニー、ワーナー、ユニバーサルなどの「メジャー」と呼ばれる映画会社は、撮影スタジオや配給部門を所有し、世界中へ作品を制作し提供し続けている。
 LAの天候と立地条件が、映画産業の発展に適していた。一年を通して好天に恵まれ、屋外で撮影可能。近郊に山あり、海あり、砂漠あり、とロケ地もバリエーションに富んでいる。ストーリーの設定が、NYでもカサブランカでも、スタジオのセットやLA周辺でほぼまかなえていた。
 ところが、20年前頃から、カナダ政府が、映画やテレビ制作へ助成金を支給し始めた。今では、ニュージーランド、フランスなど30カ国以上、アメリカ国内でも、ルイジアナ州、ミシガン州など、40州ほどが、Tax Credit(税金控除)やTax Rebate(租税還付金)などを提供し、プロデューサーたちを優遇し、ビジネスを積極的に誘致している。
 LAは、人材も機材も豊富だが、物価や労働賃金が上がり、制作コストが高くなる。プロデューサーが、安いコストで作れる場所や方法を追求するのはビジネスの自然の流れだ。
 雇用機会が州外に流れてしまうこの危機状況を『Runaway Production』と呼ぶ。LAの多くのCG&VFX(視覚効果)会社が破産し、カメラ&照明機材、衣装、大道具&小道具、メイクアップ関連の業者やスタッフは職を失った。2007年以来、LA郡のエンターテインメント産業は(不況の影響もあったが)、9000もの雇用の損失をこうむった。
 そんな状況に見かねてか、カリフォルニア州も2009年にTax Creditの法案を通した。20~25%の率で、5年間総額1億ドルまでと設定(ちなみにNY州は4億2000万ドル)。最近、この法案の延長を可決したが、まだまだサポートが足りない。
 2013年、制作費1億ドルを越える大作をLAで撮影したのは、わずか2作のみ。昨年より撮影日数が18%ほど上昇し6900日に増えたが、1996年と比べるとまだ約半分の落ち込みだ。
 再びLAが「映画の都」として活性化することを期待する。【長土居政史】

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