先週の日曜日、エルカミノカレッジのマーシー公会堂を、約1200人の観客が埋め尽くした。鳴り止まない盛大な拍手を受けたこの日の主役は、華麗なバレエダンサーでも、歌舞伎役者でも、有名歌手でもなく、障害を持つごく普通の子どもたちと、その兄弟姉妹だった。
子どもたちの力強い太鼓演奏、生き生きと踊るヒップホップ、そして全身で喜怒哀楽を表現するミュージカル「ミラクルキャッツ」、心に響くリトミックに、会場を埋め尽くした観客は惹きつけられた。
それは、「障害がありながらもがんばっている」などという同情では決してなく、障害の有無にかかわらず、子どもたちの輝く目、自信に満ちあふれる顔に、多くが感動を覚えた。そして、その輝きの裏に見え隠れする親やボランティアの一喜一憂する姿に、観客はこの壮大な「手作りアート」を純粋に楽しんだ。
障害児を育てる親の日本語支援グループ「JSPACC」を取材して10年になる。「将来は自分が妹の面倒を見ていく責任と覚悟を感じている」と、当時10代ながらにしっかりと障害を持つきょうだいを思いやっていたシブリングも、今や大学生や社会人として、障害者と健常者の隔たりのない社会を目指し、各分野で活躍している。
世の中の考えを変えるためには、同類同士で集まっていては何も変わらない。世代や人種、価値観など、それぞれの「違い」を超えて、そこで初めて外の社会に広がり、受け入れられ、変化が起っていく。そのため同会は、会員同士の親睦や情報交換だけにとどまらず、日ごろ障害者とかかわりのない人の関心を引き、障害者を取り巻く環境を理解してもらうことで差別のない社会につなげようと、20年間にわたりその活動の幅を広めてきた。
マーシー公会堂に集まった多人種の老若男女1200人は、まさに同会が信じて活動してきた成果といっても過言ではない。数人の親によって発足した会も、会員200人以上に成長した。これからも社会に「声」を発信し続けてほしい。【中村良子】