ソチオリンピックでのノルディックスキーの複合ノーマルヒルで銀メダルを獲得した渡部暁斗選手は、ドイツのエリック・フレンツェル選手と激しく1位2位を争い、銀メダルを取りました。実は、後半の10キロのクロスカントリーでは、二人が前になったり後ろになったりして風を最大限受けないような形で3位以下を突き放していきました。申し合わせることなく、雁が空を飛ぶときに体力を消耗しない方法と同じことを実践したのです。しかしながら前に出ていた距離が長かったのは渡部選手でした。解説者によれば、エリック選手の見事な作戦に渡部選手が負けたのだと伝えました。この時のインタビューでエリック選手は、「また渡部と一緒に争いたい」と言い、渡部選手が発した言葉は、「エリックがいなかったら銀メダルは取れなかった」でした。
 クロスカントリー男子スプリントのロシア代表のアントン・ガファロフ選手がレース中に転倒し、スキー板が折れてしまいました。折れてしまった板ではなかなか前に進めません。何度も何度も転んでしまいますが、地元ファンの応援に応えるためにも、ゴールを目指しました。
 そしてついに、転倒した弾みでスキー板が真っ二つになってしまったのです。レース続行は不可能…と、だれもが諦めかけたとき、ライバルであるカナダ代表のコーチが替えの板を持って助けに駆け付け、コーチ自らの手で壊れた板を交換し、ガファロフ選手は見事ゴール。
 ゴールでは大歓声となりました。レース後、助けに入ったコーチは「彼に誇らしい姿でゴールさせてあげたかった」と言いました。
 これらのエピソードは、まさにオリンピック精神を伝えています。本当の勝者はメダルをもらった人だけではないことを、私たちに教えてくれます。世界では通常の競技は、コンペティションと呼びますが、オリンピックの場合は、Olympic Gamesと呼ぶそうです。ここに偉大な意味があります。【朝倉巨瑞】

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