田中将がキャッチボールを再開した。松坂も同様にだ。和田はメジャー初勝利、437日ぶりの登板は藤川。日本人大リーガーの投手の怪我に的を絞って書きたい。活躍を誉めればいいのだが、そうではなく申し訳ない。
田沢を含めると、田中以外の前記を合わせた4人が肘を手術し、復帰に1年以上を費やした。精神力の強い投手でさえも、リハビリ期間は気持ちが折れることもあるという。孤独との壮絶な戦いを経て、マウンドに戻ってくることを知ってほしい。手術を回避した上原、黒田もこの病魔に打ち勝った。投手の利き腕の怪我は、選手生命を奪いかねず、恐ろしい。
故障の主因として、投げ過ぎが指摘される。メジャーでは100球に抑えられている一方で、日本は事情が異なる。田中は、昨年の日本シリーズで、なんと160球、そして翌日にも投げた。松坂は、高校時代の夏の甲子園準々決勝で250球、その前日の連投を合わせると398球。稲尾の4連投など、このような「伝説」の球数の多さは「美談」とされる風潮が残る。
ダルビッシュが、オールスター戦前日の会見で、田中ら続発する投手の故障の原因について持論を語り、改善を求めた。ダル曰く、メジャーの中4日登板は絶対に短過ぎ、日本の中6日あれば肘の炎症が取れるとし、先発枠5人を増やし、休養を多く取る日本式を提唱した。メジャーは、短期間の投球過多というのがダルの主張だ。
田中など日本人が多投するスプリットは、肘の故障の原因と指摘されるが、ダルは「握りが浅ければ、負担はツーシームと変わらない」と反論。そう言われてみれば、田中やダルのそれは、かつて野茂や佐々木が、決め球としたストーンと落ちるフォークとは違い、肘への影響は少なく思える。投球数については経験を元に「140球投げても…」と、米国式に異議を唱えた。人一倍練習熱心の男だが、トレーニングで肘の怪我予防はできないとし、米球界に向け、投手保護のための、提言を超えた警鐘を鳴らした感じがした。
日米の野球機構は、投手の故障防止のため協力する方針を示している。選手の中で、一番怪我が多いのは投手。ファンの1人として言わせてもらえば、故障者と言うよりも、犠牲者と思えてしょうがない。早急に対応して、救わなければならない。【永田 潤】