農林水産省ではこうした介護食品の普及のための取り組みを実施。介護食品は「スマイルケア食」とも呼ばれ、これまでの介護のイメージを変え、介護する人、される人がともに「笑顔になれる食品」として認知してもらうことを目指している。現在は肉などの一部食品に輸出規制があり、米国での展開は行われていないが、いずれ米国をはじめ世界各国への輸出促進を図っていきたい考えだ。
米国で日本の介護食を紹介するのは初の試みで、患者や施設スタッフの反応を見て、今後どのようなアレンジが必要か参考にしていくという。
今回試食してもらった介護食。冷凍またはレトルト食品になっている
同ナーシングホームの訪問にはイーエヌ大塚製薬の担当者が同行した。開発に携わった同社の林雅浩氏によると、これまでの介護食は見た目が食欲をそそらないものが多かったという。しかし、酵素を食品に浸透させることで、食材本来の形や色、味、栄養素をそのままに、舌でくずせるまでやわらかくした商品を作り上げることに成功した。「通常の食事が食べられない人に、食べる機能を回復してもらうことも目的のひとつ」と話す。
同社では和食を中心に中華、洋食など41種類の介護食を開発。2010年から販売を開始し、現在は在宅介護が必要な家庭や病院などに提供している。
こうした介護食品の価格は1食およそ500円前後で、おもに通販で販売されている。商品は冷凍かレトルト食品になっており、調理方法は電子レンジか湯煎で温めるだけ。
栄養士からは、「エビグラタンは美味しく、付け合わせのブロッコリーも硬くなくて食べやすい。煮物はもう少し柔らかい方が食べやすく、ホタテはもう少し塩分を控えた方がいい」との詳しいアドバイスもあった。「おかゆは何も味がしないけれど、おかずと一緒に食べたらいいのね」と、日本食の食べ方も理解した様子。
農林水産省の石田寿審議官は、「実際に試食してもらい、今回得た反応を今後の開発促進に生かしていきたい」と述べ、世界の高齢者の健康寿命の延伸にも貢献していきたいと力を込めた。