地酒で乾杯する(左から)ウォーカーさん、嶋根さんと、トロージャンさん
地酒で乾杯する(左から)ウォーカーさん、嶋根さんと、トロージャンさん
 ユネスコの無形文化遺産に登録され、さらなる普及に期待がかかる和食のおいしさを知ってもらおと、地元の食品業界関係者などを招待した試食会がこのほど、ビバリーヒルズの創作和食店「四季ビバリーヒルズ」で行われ、約130人が各種料理を賞味した。イベントは、日本の農産品の輸出拡大と、米国における和食の普及を目的に、日本の農林水産省が企画した。

 来米した農水省の嶋根一弘さん(食料産業局・日本食普及推進チーム)があいさつに立ち、和食の文化遺産入りを強調し「島国の日本は海の幸や山の幸に恵まれていて、四季折々の食材など、豊かな食文化を持っている」と紹介。政府の方針である「『ワショク』の促進に力を入れたい」と述べ、「みなさんの友達に勧めてほしい」と呼びかけた。

振る舞われた佐賀牛の串焼き
振る舞われた佐賀牛の串焼き
 試食会では、地元ビバリーヒルズなどから料理の味をよく知る和食ファンに和牛やコメ、すし、豆腐、地酒、焼酎など、さまざまな料理が振る舞われた。また、地酒のレクチャーも行われ、参加者は、産地や冷やしたり、温めたりして楽しむことができる飲み方などの知識を深めた。
 米国の食品業界最大手シスコ社に勤務するアダム・トロージャンさんは、全米のレストランに商品を発送する業務を行う。和食では「豆腐や、みそ、海藻類、高級米などを多く扱っている。おいしく、健康にもいいので最近は特に、需要の高まりを感じる」と述べた。「ニューヨークとロサンゼルスでは特に人気で、他の町にも受け入れられる可能性を十分に持っている」と話した。
 ケント・ウォーカーさんは、自然健康食のフュージョンレストラン「True Food Kitchen」で営業部長を務める。経営方針は「健康的な正しい食事を提供し、薬を飲まない健康生活を助けている」といい、オーガニックや自然食品などを好む健康志向の顧客に指示を受け、創業7年ながら全米5州に展開し、ワシントンDC、テキサス、ボストン、サンフランシスコ、サンディエゴ、サンタモニカ、ニューポートビーチなど10店舗を構える。食材は、主に地中海食とアジア食を用い、和食については「店では、みそ汁、しいたけ、豆腐、ビンナガマグロのたたき、テリヤキチキン丼などが人気で、和食に助けられている。世界で最も健康的な食材なので、まだまだ広がるだろう」と語った。
米国産の豆腐を使った田楽
米国産の豆腐を使った田楽
 嶋根さんによると、日本は少子化により外食産業が縮小する懸念から、農水省は先手を打って、海外に農産品を売り込むための「基盤整備」を進めているという。今回の試食会はその一環として開き「和食材を用いるレストランを増やすのが目的で、和食の良さを知ってもらいたかった」と説明した。こうした活動をパリなど他国の都市でも啓蒙に努めているとし、料理学校に日本食の基礎を学ぶコースの設置を促したりするほか、すしなど生魚を扱う、衛生セミナーを開くなど、人材育成の意識を高めているという。
 嶋根さんはまた「おいしいだけでは売れない」と力を込め「見た目(盛り付けなどの美しさ)や栄養バランスの取れた健康面も重要」と述べ、これらの和食の利点を生かし促進する考えを示した。さらに、今回の試食会とは質が異なる「B級グルメ」と呼ばれるカレーライスやラーメン、おでん、お好み焼きなどを列挙し「和食には、いろんな美味しいものがあり、安くて食べられる」と話し、高級食から日常食まで揃う幅の広さを強調し、普及へさらなる可能性を持つことに自信を示した。
 嶋根さんは、この日の参加者で農林水産大臣賞を受賞した金井紀年、雲田康夫、松秀二郎の3氏ら他が果たした和食の海外普及への貢献に敬意を表しながら「ああいう方がもっと出てきてほしい」と願った。米国人が和牛を食べ、地酒をおかわりする光景を目にしては「とても、うれしく、やる気がさらに出た。頑張りたい」と語った。
 試食会会場の同店は、全国農業協同組合連合会(JA全農)が直営し、高級和牛を軸にした創作和食を提供し、地元の富裕層に愛されている。あいさつに立った総料理長の藤本茂典さんは、和食の真髄について「だしにこだわり、だしを中心にした料理である」と説き、同店の食材は、和牛のほか、日本のコメ、空輸した魚貝類などを用いており「日本の食文化を知ってほしい」と、呼びかけた。【永田潤、写真も】

Leave a comment

Your email address will not be published. Required fields are marked *