大学時代、小田実教授の授業を受けていました。彼の授業は大学の中でも大きな教室で、マイクによる授業でした。私は優等生ではなかったので何を話していたのかは覚えていませんが、小田実氏が著した『何でも見てやろう』に刺激を受けた多くの若者が海外に出たことは確かなことです。この書の冒頭には、「ひとつ、アメリカヘ行ってやろう、と私は思った。理由はしごく簡単であった。私はアメリカを見たくなったのである。要するに、ただそれだけのことであった」とあります。そして自分の中にも明らかに「何でも見てやろう」の精神があります。
 ところで、わが家の三人の息子たちには、長男から三男まで14年にわたり、毎年夏休みを利用して、約1カ月の間、鹿児島の小学校に短期留学をさせていました。大隅半島の中程にある吾平(あいら)という町の小さな小学校です。おかげさまで息子たちは日本の文化を吸収し、日米の良い所と悪い所を比較して考えることができるようになりました。何よりも鹿児島に息子たちが戻ると、小学校の友達や先生たちが大歓迎をしてくれることが、息子たちの大きな喜びや励みになりました。
 そこで、小学生から中学生になる前の春休みにアメリカを体験してもらおうと、ホームステイの受け入れをすることになりました。これが今まで鹿児島の小学校に受けていた恩返しにもなるかと思ったからです。学校を通じて募集をかけたら、受け入れ枠を超える希望者がありましたので、作文を書いてもらったのですが、どの作文にもアメリカを見たいという強いメッセージがありました。小さな町で日本だけを見て育ってきた子供たちには、「何でも見てやろう」という強い意志があることがわかりました。アメリカの学校に体験入学したり、日系移民の歴史を学んだり、アメリカの子供たちと交流をするのが大きな目的です。そしていつの日か、そういった子供たちの中から、グローバルな視野に立った日本のリーダーが出てくることを期待したいと思っています。【朝倉巨瑞】

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