最近、会話をしていて、相手の声は聞こえているのに何を言っているのか言葉を理解できないことがあったりする。2、3度聞き返している始末だ。家庭内でも突然妻が想定外の話題について話しかけてきたとき、その声はじゅうぶん大きく聞こえるのに内容が理解できず、「エッ、ナニ?」と聞き返したりする。また私は若いころから多少難聴ぎみだったゆえか、他人に対してつい大きな声で話しかける癖があり、「君とは内緒話はできそうにない」といわれたものだったが、最近は口ごもり、滑舌も悪くなった。
 ひとは高齢になると体力減に伴う聴覚障害を引き起こすという。加齢性(老人性)難聴ともいい、一般的には「耳が遠い」といういい方をされる。これは個人により大差があるものの、通常50歳を超えると聴力が低下しはじめ、60歳以上になると会話の面で不便になり始めるのだそうだ。私にもこの加齢性難聴が顕著にあらわれたようだ。
 加齢性難聴は、音域により聞こえる程度が異なり、特に高音域の聴力低下が目立つという。そのため人間の言葉のうち、特に「あ」行や「さ」行が正しく聞き取れないことが多いとか。また雑踏の中などのように、複数の音が交差しているときの会話が聞きづらくなったり、ぼやけて聞こえるなどの現象も自覚するようになるという。
 最近、私が人と会話しているとき、音は十分聞こえているのに内容が理解できないことがあるのは、もともとの難聴に加えて相手の言葉のうち、例えば特定の高音域の部分が認識できず、折角、相手が正しく発音してくれても、発音どおりには聞こえなくなっているのかもしれない。これが進行すれば、補聴器のお世話にならなければならないだろう。
 前回の「磁針」に私が書いたコメントについて見知らぬ読者の方から留守電話をいただいた。「磁針」に書いた私と似た体験をされたようで、一度私と話をしたいと電話番号を残してくださったのだが、録音を何度聞いても聞き取れない番号だった。これも私の加齢性難聴が理由のようだ。電話をくださった方、恐縮ながらもう一度コンタクトいただければ幸いだ。【河合将介】

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