職場のプログラムの一つに、就学前の5歳以下の子供のための日本文化サークルがある。ダイパーから5歳までということで、参加する幼児には必ず保護者が付いてくることになっている。
保護者のほとんどが母親で、中には共稼ぎのために祖父母やベビーシッターがくることもあるが、気をつけてみていると、この頃少しずつ男性、つまり父親が付き添ってくるケースが増えてきた。
片手に子供を抱いて、空いた手でダイパーバッグや子供のスナックを下げ、その上ギターのケースを持参するお父さんもいる。
元々ボランティア・グループが発足させたプログラムだけに保護者のプログラム参加が盛んで、父親も自分の得意な分野で積極的に参加するのだが、汚れたオムツを取り替えたり、ミルクを飲ませ、離乳食を食べさせ、童謡を歌い、子供と一緒にクラフトも、と手つきも慣れたもので、危なっかしいところがない。
中の一人に職業をたずねたところ、「私は専業主夫です」と悪びれず答えた。どの父親もワイフが良い仕事を持っており、収入が上なので、自分の仕事を諦めて、家事育児を引き受けることにしたという。この日参加した20人の子供のうち、父親と一緒に来た子供が5人、全体の25パーセントである。
妻が家計を支える稼ぎ手になり、夫が家庭を守るという、一時代前の日本人の感覚からみると夫婦の立場が逆になっている。母親の職業は公認会計士であったり、弁護士、教職もあれば企業の管理職もある。
今さらウーマンズ・リブを持ち出す時代ではないのかもしれないが、私などは人間が古いだけに、「女性よ、よくもここまで頑張った」と、思わず拍手の一つもおくりたいところだ。
その一方で総体的にはまだまだ職場における女性の地位の低いこと、男性と同じ仕事をしながら初任給も下なら昇給率も低い、管理職の数も数えるほどだと言われれば、目の前の出来事だけで感激するなどは、群盲象を撫でるに似ている。
近づく「母の日」のために、子供と一緒に「お母さんありがとう」のカードを創っているお父さん、あなたにも感謝のカードが届きますように。【川口加代子】