10人の招待客に濃茶をもてなす茶道裏千家十五代家元の千玄室氏(左)=ロサンゼルス郡美術館
10人の招待客に濃茶をもてなす茶道裏千家十五代家元の千玄室氏(左)=ロサンゼルス郡美術館
世界平和を願い、献茶をする十五代家元の千玄室氏
世界平和を願い、献茶をする十五代家元の千玄室氏

 茶道裏千家十五代家元の千玄室氏が5月24日、世界平和を願う献茶式および和合の茶会、講演会、デモンストレーションをロサンゼルス郡美術館(LACMA)で催した。LACMAの日本美術パビリオンでは現在、日本でもあまり目にすることができない約100点におよぶ楽焼茶碗の展示が行われており、会場には約600人が駆けつけ、千玄室氏の点前を拝見するとともに、茶道の伝える「和敬清寂」の理念を学んだ。

 千玄室氏は過去60年以上にわたり、「一碗からピースフルネスを」という言葉を掲げ、世界60数カ国を300回以上歴訪、茶道の普及と世界平和に努めている。2002年に長男の千宗室氏に家元を継承後も、現在92歳と高齢でありながら精力的に活動を続けている。
 献茶式では、ステージ上に千玄室氏が登場すると、ほぼ満席の会場から大きな拍手が沸き起こった。静寂の中、椅子に腰掛けて茶を点てる「立礼」で美しい所作を披露。ステージ中央に設置された平和祈念の献茶台に深く礼をし、一碗を捧げた。
 続いて、楽焼茶碗で濃茶を練り、在ロサンゼルス日本国総領事館の堀之内秀久総領事、サビーン夫人をはじめ、ノーベル物理学賞受賞の中村修二氏、前バハマ大使のニコール・アバント氏、裏千家淡交会ロサンゼルス協会名誉会長のグレン・ウェブ氏、国際交流基金日本文化センターの原秀樹所長ら計10人の招待客をステージ上でもてなした。招待客は、ひとつの茶碗を飲み回しする濃茶を堪能し、亭主と平和な時間を分かち合った。
 講演会では、450年にわたり楽焼の伝統と技術を伝承している楽家を紹介。「手捏ね(てづくね)」と呼ばれる手とへらだけで成形する楽焼茶碗の歴史とその素晴らしさに触れるとともに、「一碗の中から大きな宇宙を感じてもらいたい」と、茶の奥深さを訴えた。また、茶道の歴史や「和敬清寂」の精神、平和・平等の教えなどを説いた。

一碗を満喫する参加者
一碗を満喫する参加者

 講演後には、別室で一般客にも茶が振る舞われ、一碗を満喫した。
 サンフランシスコから来場したデボラ・クリアウォーターズさんは、裏千家茶道を習って15年になる。もともと日本のアートに興味があり、日本画や陶器、日本文学などを勉強する中で茶道に出会った。茶道について、「まったく知らない人とでも、親密な空間で茶を共有することで互いの距離が縮まる」として、「茶道を通じ、作法や言語、歴史はもちろんのこと、人に対する感謝の気持ちを一番学んだ」。また千玄室氏のデモンストレーションについて、「まるで音楽家の演奏を聞いているかのような流れる動き。千玄室氏の作法から伝わる美しいアートを拝見でき、大変光栄に思う」と話した。
【中村良子、写真も】

Leave a comment

Your email address will not be published. Required fields are marked *