「ヤバイ」という表現は、もともとは泥棒の隠語で、見つかったり、捕まったりしそうだ。危険だという意味だったという。ところが最近の若者たちには「あの子、カッコイイね。ヤバイヨ」のように「ヤバイ」を肯定的な意思表示に使っているようだ。道徳観念で生きる私たちシニアにとって、ヤバイ反社会的行為も、平成世代の若者にとっては、むしろヤバイことが魅力的であり、彼らの自己主張の一つとなるのだろうか。
10年ほど前、日本から研修旅行に来た大学生数名ほどを日没時のサンタモニカ海岸へ案内した時、海の彼方に沈むサンセットの雄姿に彼らが異口同音に発した言葉が「ヤバイ!!」または「ヤベエ!!」だった。
最近、文化庁から発表された日本語に関する世論調査の結果によると、日本人10代の9割が「ヤバイ」をすばらしい、良い、おいしい、かっこいいといった良い意味で使い、10年前にくらべ、肯定的な使い方が拡大したという。
10年前の調査では「ヤバイ」を肯定的に使ったことがある人のほうが、ない人を上回ったのは、20代以下だけだったが、今回は30代以下にも広がり、 9ポイントも増えたという。
「本来は盗っ人仲間が隠語として使っていた言葉。肯定的に使うことで、より印象づける表現として広がっているのではないか」と文化庁の担当者はみているそうだ。
今回の調査でも、70歳以上では肯定派は5%にすぎず、私自身もとても肯定的に使う気にならない。「ヤバイ」の語源には諸説あるようで、必ずしも泥棒の隠語だけではなく、他にもあるようだが、この表現自体がネガティブな印象であり、品位を感じられない。
日本を離れて海外で生活している日本人にとって、日本を離れた時の日本語が自分たちの日本語なので、意外と古き良き日本語と暮らしている場合が多いといえよう。日本語を研究する内外の学者の先生方でも、海外に生活する日系人に真の日本語を見出して研究対象にしている方も多いと聞く。
最近のギャル言葉を対象とするより、海外生活の長い日本人を相手にするほうが意義大ではないだろうか。【河合将介】